第277話 貰うもの

「くそっ!面白くねぇ!」

リュウタは駅の裏に行って壁を殴る、ゴウが自分より上手く剣を扱えている事が悔しいし、なにより女の子にちやほやされている姿に腹を立てていた。

自分は天下無敵なのだ、喧嘩をすれば負けた事など無い、だがゴブリン一匹倒すのに大怪我をし、一歩間違えれば死んでいたのかも知れない、一人になって持っているロングソードを見ると少し震えがくる。


「リュウタさん、一緒に剣の練習しませんか?」

不良仲間のシュウタがリュウタを稽古に誘いに来る。


「稽古がなんだ!大事なのは実戦じゃねえか。」

「そうかも知れないけど、ゴウさんの剣を見てたけどあれ程強い人が稽古が大事って言うならやってみても良いかなって。」


「あいつが強い?

な訳ないだろ、ローキックをして足を痛そうにしてたじゃ無いか。

まったく蹴りに慣れてない証拠だなあれは。」

「おお、リュウタさんからすると強く感じないのですね!」

「まあな、あれは喧嘩慣れしてない、まあよくある道場剣法って奴だな。

実戦じゃ使えないな。」

「そうなんですね!」

「まあ、あいつのお遊戯に見る目の無い女どもにはわからないかも知れないな。」

リュウタは強がりもあり、ゴウを大したことは無いと話すのだった・・・


俺が部屋に戻ると一度わかれたククリが刀を持って部屋に訪ねてくる。 

「ゴウ様、これはお父様からお預かりしてきた刀です。

どうかゴウ様の佩刀にしていただけませんか?」

「いやいいよ、佩刀する程の腕は無いし。」

「何をおっしゃっていますか?

充分な実力をお持ちです!

お父様から是非ゴウ様にと預かってきた物なんです。

どうかお収めください。」

「それならなんで最初に渡さなかったの?」

「ゴウ様が遠慮なされてお父様に返却する恐れがあるからジョージア王国に着いてから渡すように言われておりました。」

「クーラさん、謀ったな・・・」

「まあまあ、それよりまずは刀身を見て下さい。」

魔王所有の刀か・・・

貰うかどうとかはおいておいて、剣を学んだ身としては興味はある。

俺はククリから刀を受取り、刀身をあらわにする。


「これは凄い・・・

吸い込まれるようだ・・・」

「凄いでしょ!これはドワーフの名工ヒビキが打った大業物の一つです。」

「いや凄いよ・・・

でも、こんなに凄い刀を理由無く頂く訳にはいかないよ。」

「大丈夫です、ゴウ様は充分に受け取る資格があります。

ゴウ様が魔王国にどれだけの利益を生んでいるのかおわかりになるなっていないのですか?」

「それ程利益になってる?」

「なってます!交通機関をお作りになられただけでなく、各地にお店を構えられ、数多くの物資を提供して頂きました。

刀の一つでは足りないぐらいの恩恵を受けております。」

「それほどかな?」

「ご自覚ください。」

「・・・わかった、じゃあこの刀は頂くとしようかな。」

「ありがとうございます。

これでお父様からの頼みの1つが片付きました。」

「頼みの1つ?他にも何かあるの?」

「はい、いくつかございます。

折を見てゴウ様にお願いすると思います。」

「俺に出来ることなら協力するよ。」

「ゴウ様にしか出来ない事ですけど・・・

本当に協力してくれるのですか?」

「まあ、出来る事ならだけど・・・」

 

ククリは少し考え意を決したようにことばを発するのだが・・・

「それでは私に子だ・・・」


「ゴウ兄、学ぶくんが話があるって・・・

ククリさん、どうしたの顔があかいよ?」 

言葉の途中でカスミが部屋に入って来て声をかき消すのだった・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る