第275話 稽古
「やる気になったか、じゃあ俺が相手を・・・」
「無礼者!ゴウ様のお相手をするのはこのククリしかいない!
魔王が娘を差し置いて口を挟むなら、その命無くなる物と心得よ!」
リュウタはゴウを稽古を理由に殴ってやろうと考えていたのだが、それはククリの言葉によって遮られる。
「あの、ククリさんはかなりの強者と聞いていますよ。
私が相手をするには荷が重いと思うのです。」
「わかってます、桐谷流の奥義を受けることは難しいかも知れませんが、ゴウ様の打ち込みに合わせますのでご自由に打ち込んでください。」
「・・・わかりました、でも前もって言っておきます、私は桐谷流の初伝です。
お望みの強さはありませんよ。」
「知ってます!それより早く私に打ち込んでください、もう我慢できません♪」
ククリは見るからにウズウズとしていて楽しそうに構えている。
「わかりました、では参ります。」
「よろしくお願いします。」
俺達は礼をしたあと・・・
俺は素早く横薙ぎの一閃を放つがククリは難なく受け止める。
「良いです♪これ程の剣閃は魔族でも多くないです。」
「褒められているのかな?
それより次もいくよ。」
「どうぞお好きなだけ打ち込んでください♪」
俺が打ち込む攻撃は簡単に受けられ、返しに一撃を放たれる、俺はそれ剣を受け流しつつ、懐に入り足払いを仕掛けるのだが・・・
「かたっ!」
足払いをした足を逆に傷める結果となる。
「申し訳ありません、脛当てを常時装備しておりましたので、お怪我はありませんか?」
「だ、大丈夫、怪我はしてないし、脛当ての可能性を忘れていた俺の不注意だから。」
ククリに心配されて俺は恥ずかしい思いをしたほうが痛かった。
「あいつ剣の稽古に蹴りを入れたぞ、あーなんて卑怯なんだ。」
外野からリュウタの声が聞こえる、たしかに剣道の試合なら反則だろう、だが桐谷流は相手に勝つ為なら手段を選ぶなという教えがある、足払いぐらい可愛い物だという認識が俺の中ではあったのだ。
「弱い者は黙れ、今のやり取りに卑怯などあるか!
私は流れるような反撃に心躍るばかりなのだ、それもわからぬならこの場にいる意味など無い!」
ククリの反論に他の中学生達も反応する。
先程の俺達の打ち合いを見えていた者はほとんどおらず、ただ早く動いていた者が最後に蹴りを入れただけに見えていた、だがそれでも剣を振るっていた事だけはわかっている、ククリの言葉を聞いて自分達ではわからないハイレベルの闘いがあった事が伝わっていた。
「リュウタは今のが見えていたのか?」
「はぁ?お前達は見えて無かったのか?」
「見えるも何もガッっていう何かが当たった音ぐらいしかわからなかったぞ。
その後、蹴った事もゴウさんが足を押さえているから予想出来ただけだし・・・」
「ま、まあ、お前達じゃ無理も無いかもな。」
リュウタは強がったものの他の奴等と同じ・・・少しは木刀が動いていた事がわかったぐらいであった、だがそれでも自分が全くわからないなど言える筈が無かった。
「ゴウ様、続きもお願いします♪」
「あはは、今日はこれぐらいにしとこうか。」
「えーそんな・・・」
ククリはシュンとなるのであった・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます