第272話 見栄

自室に戻ったカスミは俺に聞いてくる。

「ゴウ兄から見てリュウタくんの怪我は大丈夫そう?」

「動きをみる限りちゃんと治っていると思うよ。」

「良かったぁ〜」

カスミはリュウタの怪我が治っていると聞いて一安心する。


「カスミさんはあのような放言をする者にお気になさるのですか?」

ククリは不思議そうに質問する。

「放言ですか?」

「ええ、ゴブリンキングなどあのような未熟者に倒せるはずがありません、そもそも一騎当千の武芸者か、軍を動かす必要がある程の敵です。

現れたのなら街中で騒ぎになっている事でしょう。」

「えっ?でも、あの怪我は・・・」

「あの怪我は自分で斬ったのでしょう。

剣に慣れない者がよくやる怪我です。

それこそちゃんと基礎を学んでない者の証です。」

「ククリさん、そこまでにしましょう。

彼はまだ若いのですから友人達に見栄を張りたい所もあるんです。」

「ゴウ様はお気付きになられていたのですね。」

「そりゃ多少なりの訓練は受けているから・・・」

俺は遠い日の地獄を思い出す。

本家を継ぐ訳でも無いのにただ後継者の相手努めれるように訓練を受けたのは懐かしくもあり恐ろしい思い出でもある。


「じゃあ、リュウタくんの言葉って・・・」

「まあ、見栄だろうね、ただ剣に血の跡は見受けられたから何かを倒した事は間違い無いと思う。

その点ではよく頑張ったと思っているよ。

出来れば基礎だけでも訓練を受けて欲しいとは思うけどね。」

「私の方からも声をかけてみる。」

「いや、カスミちゃんの前ではもっとムキになりそうだからね、マナブくんの方から言ってもらうよ。

彼の方から言ってもらった方が受け入れやすいと思うし。」 

「でも、言いにくい事を人に任せるのは・・・」

「適材適所ってやつだよ。

可愛い女の子の前だと男の子は良い格好しようとするからね。

リュウタくんみたいに強さを誇りに思う人なら尚更だと思う。

訓練の話は俺の方からルートさんに伝えて指導者を呼ぶから、もし同級生で参加したい人がいたら誰でも参加して良いと伝えてくれるかな?」

「他にもいるかな?」

「護身的な意味でもなるべく受けたほうが良いと思う。

カスミちゃんも受けてみる?」

「たしかに護身術は必要かも知れませんね。」

「うん、何か合った時の心構えにもなるし良いと思う。」

こうして中学生達を中心に訓練が組まれていく事になるのであった。

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