第270話 獲物
「いいものみっけ・・・」
リエは倒れたリュウタを見つけてニヤリと笑う、王都近くの森とはいえ、それなりに奥深く人気は無い、まだ生きているようだがリエにはあまり関係無い、自分の射程に入るように一歩ずつ近づく・・・
「誰だ!誰かいるのか!」
リュウタはリエの踏んだ枝が折れる音を聞き、声をかける。
「あら、まだ声を出す元気があったのね。」
「誰だか知らないが助けてくれ、足を怪我しているんだ!」
「なんで私が助けないといけないの?
冒険者なら怪我も自業自得でしょ。」
「頼むって、助けてくれたらちゃんと報酬は払う。」
「見たところ駆け出しの冒険者でしょ?
報酬言われてもたいした額は出せないでしょ?」
「大丈夫だ、俺は駅はわかるか?
あそこに住んでいるんだ、あそこにある店の関係者なんだ。」
「あら、そこの関係者なら内部事情にも詳しいのよね?」
「勿論だ。」
「なら質問に答えてくれたら、あなたの話を信じてもいいわ。」
「わかったなんでも聞いてくれ!」
「質問、あそこのトップの名前はなに?」
「ゴウという奴だ。」
「そう、それなら一緒にいる女の子の名前は?」
「カスミ。」
「カスミって誰よ。あんた嘘を言える立場だと思っているの?」
「嘘じゃ無いって、同級生のカスミが一緒にいるんだ。
いや、それとは別に高校生の女の人と小学生の女の子が一緒に居たけど名前は聞いてない。」
「・・・ふーん、それで高校生の女の子は何処にいるのかわかる?」
「ゴウと一緒に色々移動しているみたいだ、今は海を渡って別の国に行くって聞いたぞ。」
「海の向こうですって!!」
「ああ、嘘じゃない!それより早く町に連れて行ってくれないか、だいぶ血が流れているんだ。」
「質問に答えなさい、そうすればポーションを一つあげるわ。」
「ポーションだって!本当に効くのか!」
「効くわ、私が保険で持っている物の一つよ」
「早くくれ!」
「待ちなさい、あなたにゴウを駅の外に呼び出す事は出来る?」
「ゴウを?お人好しだからな、相談したいと言えば呼び出すぐらいは出来るかも・・・」
「それはいいわね、なら私が指定する場所に呼び出しなさい。」
「わかったからポーションをくれ!」
「契約が先よ、少し待ちなさい。」
リエは契約の魔法書にゴウを呼び出す事と引き換えにポーションを渡す事、違約した場合、金貨百枚を自分に渡すように記入する。
「さあ、これに名前を書きなさい。」
「わかった!」
リュウタは傷を治したい一心から名前を書く。
「契約は出来たわ、これを傷に振りかけなさい。」
リエはポーションを渡す。
「ああ!」
リュウタは慌ててポーションを足にかけると傷がみるみる塞がっていく。
「助かったのか!お姉さんありがたい!お陰で助かった!」
「契約だからね、でもちゃんとゴウを呼び出すのよ。」
「わかってる、命の恩人との約束を破るような真似はしねえ。」
「そう、それならいいの。
ゴウが駅に戻ってきたら此処に連絡しなさい、私と連絡がつくから。」
リエは自分の連絡先を書いた紙を渡す。
「わかった・・・
そうだ、お姉さん名前は?」
「エーリよ。」
リエはリュウタの口から名前が漏れて警戒されないように偽名を名乗る。
「エーリさん、俺はリュウタ。
恩は絶対に返すからな。」
リエは軽く手を振り、去っていくのだった。
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