第263話 帰国
「ゴウ様、我々はそろそろ帰国しようという話になっているのだが、ゴウさんはどうしますか?」
魔王国に滞在して2か月、ジョージア王国の面々が帰国する事になる。
「たしかに長い滞在になってますね、王都に店を開いてますから気にもなりますし、一緒に一度帰ろうと思います。」
「おお、それは良かった、ゴウ様とがこのまま魔王国に滞在してしまうのではないかと不安になっておりました。」
「色々見て回りたいし、魔王国だけに滞在するつもりは無いよ。
まあ居心地が良かったのは間違い無いからまた戻って来るとは思うけどね。」
ルートの笑顔は少し引き攣る、どうにかしてジョージア王国に繋ぎ止めるように言われているのだがゴウ自身の意志を強要する訳にはいかないのだ。
「わかりました、アリサ王女様にもお伝えしておきます。」
「俺もクーラさんに伝えておかないとね。」
俺はクーラにジョージア王国に帰ることを伝えに行く。
「なんと!ジョージア王国に行かれるのですか?」
「ええ、居心地が良かった為に思いのほか長く滞在しておりましたが、向こうの様子も気になるので一度帰ろうと思います。」
「我等はゴウ様のご意思に従うのみですが、折角出来たご縁にございます。
どうか魔族の者を供にお連れいただけませぬか?」
「それはいいけど、向かうのは人族の国です、何か危害が加えられるかも、しれませんよ。」
「魔族として生を受けた以上、己の身は自身で守るべきもの、ゴウ様の供に付く栄誉を授かれるのでしたら皆が望んで向かうことでしょう。」
「あまり多いのはちょっと。」
「わかっております、供に向かうのは私の娘ククリです。
誰かククリを呼んでこい。」
「ちょ、娘さんって!王女になるんじゃないの?」
「まあ娘ですので一応王女ではありますがお気になさらず、それなりの武は身につけております。
人族に遅れを取ることはございません。」
「いやいや、いくらなんでも王女様を連れてはだめでしょ。」
「お父様、お呼びと聞き参りました。」
現れたのはミユキさんと同じぐらいの歳の女の子だった。
「おお、ククリよく来た。
お前にはゴウ様について行ってもらう。」
「私がゴウ様と一緒に!!」
「ほら、普通はありえないから、ククリさんも気にしなくていいですよ。
クーラさんもタチの悪い冗談は控えてください。」
見るからに驚いてプルプルと震えている、ここは俺からクーラさんに一言言わねばなるまい。
「光栄です!!
本当に私が一緒に行っていいんですか!!」
だが、ククリは目を輝かせていた。
「ちょ、まって!ククリさんはいいの?
お父さんの命令だからと言っても拒否する事は拒否しないと駄目だよ。」
「拒否?何故ですか?」
「いやいや、王女様でしょ?」
「大丈夫です、王女とはいえちゃんと身の回りの事は出来るようにしております。
野営もオッケーですよ。」
「たくましい・・・
って違う!年頃の女の子が男についてくるなんて言っちゃ駄目です。
何かあったらどうするんですか?」
「何か・・・」
ククリは何か想像したようだが・・・
何故だろう、口元が緩みヨダレのようなものが・・・
「大丈夫です!ちゃんとできます!」
「しちゃ駄目って言ってるんです!
クーラさんからも何か言ってください!」
「私は男の子を待ってるぞ。」
「こら魔王!それが娘にかける言葉か!」
「大丈夫、ゴウ様の血を後世に残すことが魔王の使命です。」
「お父様、ククリはゴウ様と供にイキます!」
「ククリ、期待しているぞ。」
この親娘の会話に頭の痛い思いをするのであった。
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