第262話 朝帰りは

「ミユキさん、朝帰りは認められていませんよ!」

家にしている別のホテルに帰るとカスミにミユキが問い詰められていた。

「あはは、ゴウさんが酔ってしまって帰れなくなったのです。」

「それでも帰る事は出来ましたよね?」

「カスミちゃん、自分がその状況なら帰りましたか?」

「・・・それは別の話です。」

「それが答えですよ。」


「ミユキさん、焦りすぎです。

ちゃんとゴウさんの気持ちを大事にして何年か待つべき。

せめて3年。

3年あれば・・・」

アヤカは自身の胸を触るがまだ無いと言っても過言ではない、此処からの3年の成長に期待したい自分がいた。


「アヤカちゃん、私は今なの。

アヤカちゃんを待つ気は無いからね。」

「ミユキはズルいです。

私だって負けないぐらいの美少女のはずです!」

「負けないぐらいの美少女だから、手加減も出来ないの。

もしゴウさんがそちらの趣味なら私に勝ち目が無いし・・・」

「むう、今度のデートで確かめてみる。」


「二人ともお出かけをデートと言わないの!

お兄ちゃんにそんなつもりはないんだから!」

「カスミちゃん相手ならそうかも知れませんけど、少なくとも私は意識してもらっていると思いますよ。」

ミユキは充分に魅力的であり、年齢こそ少し若い物のそれもあと一年ぐらいの話であり、血も繋がっていないというカスミの弱点も無いのだ、ゴウが意識してしまうのも当然の事とも言えた。


「いいもん、今日のお出かけは私の番だから、お兄ちゃんに私を意識させちゃうんだから!」

「あー、今日はお出かけできないかも・・・」

「なんで?」

「昨日飲み過ぎて二日酔いみたいだし・・・」

「えー、そんなぁ・・・」

カスミは悲しい声を上げるのであった。


その頃、ラインの所にはラニアン王国からの使者が来ていた。

「ラニアン王国が今更なんのようだ?」

「ライン殿が間違った認識がお有りのようですのでそれを正しに参りました。」

「私が間違った認識だと?」

「はい、陛下はライン殿を始めロンベル家を頼りにしておられるのです。

その一つがプレザ殿への婚儀のお話だったのです。」

「プレザは家を捨て出ていった者、今更どうしようと勝手だ。

当家とは全く関係の無い事。」

「そうおっしゃられるな、血の繋がりという物は切ろうとして切れるものではありません。

しかし、それとは別にライン殿にも良きお話をお持ちしました。」

「私に良い話とな?」

「はい、聞けばプレザ殿が王家と縁を持つことによりロンベル家の家督に口を出してくると懸念されておられるとか、ですが陛下にそのようなお気持ちは欠片も無く、陛下はライン殿とも縁を持とうと絶世の美女と呼ばれるマルリーヌ様をライン殿に嫁がせる事をお決めになられました。」

「断る!」

「ライン殿?」

「マルリーヌ様と言えば既に四十手前の行き遅れ、しかも甘やかされ育ったせいで性格も我儘放題、事故物件として評判の者ではないか!」

「それは言い過ぎにございます。

ライン殿は妻を持たず、三十を越え、歳もマルリーヌ様と比較的近いと言えましょう、王家と結びつきを持つことを考えれば最高のお話ではありませぬか?」

「使者よ、本気で言っているのか?」

ラインがギロリと睨むと少し疚しいのか視線を背ける。


「マルリーヌと言えばかつて絶世の美女と持て囃されたが今や王家の豚として目を背ける者であろう。

私は私に相応しい女性を探しているのであって、豚を妻にする為に独り身でいるのではない!」

「ライン殿、口が過ぎます!」

「使者よ、塩を止め我等を追い詰め、王家の豚を押し付けるつもりかも知れぬが残念だったな。

既に我々は魔王国から塩の援助のみならず多大な援助を受けている。

ラニアン王国に付き従う理由は一つもない、わかったらさっさと出ていけ!」

「ライン殿!お待ちを、陛下はライン殿を怒らせるつもりは無く!」

「黙れ!これが怒らぬと本当に言っているのか!お前の首を取らぬだけでも感謝しろ!」

「・・・わかりました。陛下にはマルリーヌ様と縁談をお断りするように伝えますが、どうか魔王国に付く事は今しばしご猶予を!」

「くどい!民を人質に取り脅迫する国と、すぐに救済をしてくれる国、どちらに付くかは明白だろう!」

「相手は魔族にございます!」

「関係ない!少なくとも魔王国は理性的な国である、私は魔王国を裏切るつもりは無いと断言する!」

「ライン殿!どうかご再考を!」

「うるさい、コヤツをつまみ出せ!」

ラインは使者を無理やり追い出すのであった・・・

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