第256話 イーヨの観光

魔王国首都イーヨに帰って来た俺はしばらくイーヨを探索していた。

長年魔王国の首都であり、魔族文化を育んで来たイーヨは日本の、いや自分が知る限り地球のどの国とも違う町の造りをしており、異国情緒ならぬ異世界情緒を堪能出来ていた。


「ゴウさん、あれ見てください、玄関が二階にあるのに階段がありませんよ。」

今日はミユキと一緒に散策しているのだが、どうやら女性陣で取り決めがあるようで毎日一人ずつ一緒に散策に出るようになっていた。

「なるほど、空を飛べる種族からしたら階段はいらないのか。」

「多種族の友人の訪問はどうするのでしょう?」 


「これはゴウ様、ミユキ様、何か御用でしょうか?」

背中にカラスのような羽根を生やした魔族がたずねてくる。


「失礼しました、町を散策している中、あちらに階段の無い家を見つけまして、多種族の訪問はどうするのかなと疑問に思っただけです。」

「あの家ですか、たしかにあの家に住む鴉天狗は人付き合いを嫌い階段の無い家を作ったようですが、多くは階段を作りますよ。」

「多くはというと他にも作らない人がいるのですか?」

「まあ、存在しますね、元々地球に住んでいた時の名残であえて無いのお家ではあいつぐらいのものです。」

「なるほど・・・」


「しかし、仲がよろしくて何よりです。剣神様もお喜びのことでしょう。」

声をかけてくれた者は幸せそうな笑顔を俺達に向けていた。


「ありがとうございます。」 

ミユキは俺と腕を組み嬉しそうに答える。

「ちょ、ミユキさん!

このタイミングでそんな事をしたら・・・」

俺が制止する前に周囲から歓声が上がる。


「剣神様、創造神様の血を引く子の誕生じゃあ!!」

誰かの上げた声に更に歓声が高くなる。


「まった!落ち着いて!飛躍し過ぎだから!」


「ミユキ様、お子様どちらがご希望ですかな?」

「どちらでも嬉しいですけど、まずは男の子かな?」

「おお!聞いたか皆よ、男の子誕生を願うのだぁ!!」


「待ったぁ!!話を聞いてよ〜」

「ゴウさん、さあ行きましょう。」

ミユキが嬉しそうに腕を組み先に進もうとする。


「待って、誤解を解かないと!噂が広がっちゃう!」

「大丈夫です、人の噂は十月十日と言いますから。」

「うん?なんか違わなくない?」

「大丈夫です、噂は無くなりますよ。」

ニコニコしながら話すミユキに何か騙されているような感じを受けながらも騒がしくなった一角から立ち去るのであった。

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