第253話 反乱の報告

「なに!ラインが反乱を起こしただと!!

あの裏切り者め!!」

ロンベル領の魔王国への降伏はルデンにいるヘリオスを始め多くのものが知る事態となっていた。


「陛下、裏切り者を始末せねばなりますまい、軍のご用意を。」

ヘリオスの腹心でもある、ロング伯爵はラインの裏切りに憤慨し、軍を起こす事を進言するのだが・が何か

「まて、魔王国に対して備えねばならぬ以上、軍を動かす訳にはいかない。」

「ですが!!」

「今は耐える時であろう・・・

だが何もせぬ訳にもいかぬ、使者を送り降伏の撤回を求めるのだ。」

「陛下、何を条件に降伏を思いとどまらせますか?」

「塩の停止を止めるのは当然の事だが・・・

我が妹、マルリーヌをラインの妻へおくろう。

絶世の美女と言われたマルリーヌを妻に出来るならラインも喜ぶ事であろう。」

「マ、マルリーヌ様ですか?思い止まった方が・・・」

「そなたが言うのもわかる、だが国難の時である、マルリーヌもわかってくれるだろう。」

「い、いえ、そうでは無く・・・」

ロングが言い澱むには理由がある。

マルリーヌが絶世の美女と言われたのは十五年も前の事であった、その頃なら引く手数多だったのだが、彼女自身の望みが高すぎ、結婚しないまま四十手前の歳まで来てしまっている。

さらに王家の食事が良いのか、豊満な身体を身に着け、当時を知る者からすれば、時の流れの残酷さを感じるのであった。


だが、家族思いのヘリオスにとってマルリーヌは以前のマルリーヌと変わらないのである。

絶世の美女と吹聴して王家優位の婚姻をむすぼうとして失敗続きだったのだ。


「ロング、そなたが使者となりラインに思い止まるように伝えよ、マルリーヌとクロエ、二人の王女を一つの家が娶るなど普通ではありえぬ名誉であると伝えるのだ。」

「陛下、それならば領地の割譲を検討すべきと思います。」

「そなたがマルリーヌの身を案じているのはわかる。

だが与えれる領地も少ない今では少しの領地を与えた所で反感を買うのは必定、ならばこそ二つとない至宝と言われたマルリーヌを差し出す事でラインの考えを変える事になるであろう。」

「・・・それが君命とあらば従うしかございません。」

ロングは良くも悪くも忠義の者である。

王のヘリオスが決めた以上、従うしか道は残っていないのだ。

ヘリオスの前から下がったあと、これから来る任務に胃を痛めるのであった。

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