第252話 第一の部下

「ライン様がおっしゃられたように今後はこんな素晴らしい物を販売されるようになるのか!」

ロンベル領は王都から遠い北方という事もあり、物流が滞る事が多く、多くの商品が店に並ぶという事は少ない。

だが魔王国直営店ではそれを嘲笑うかのように多彩な商品の数に多くの領民が目を見張っていた。


その上、全ての商品が洗練された精度で作られており、見ているだけでも目の保養になるのだが・・・

「店主、本当にこの値段で販売しているのか?」

「はい、本日は開店記念で5割引とさせていただいております。

平時ならこちらの値段でございます。」

「いやいや、平時でも安かろう、本当にこれで売ってくれるのか?」

「はい、この値段はゴウ様がお付けになられた値段にございます。

私達が何か言うことはございません。

ただ、本日に限りに多くの人に買ってもらいたい為、同一商品はお一人様三点までとさせていただいております。」

「三点までか!全部欲しい所だが致し方無い。

三点全部くれ。」

「かしこまりました。」

商人と思わしき者は転売する事も考え三点購入していく・・・


「ゴウ様、本当にあの値段でよろしいのですか?」

店員をする鬼族から疑問がくる、買っていく者の中には転売目的の者も少なくない、ゴウの商品を使い私腹を肥やすなど許し難い行為であると怒っているのだ。


「いいよ、いつも此処に来たらこの値段で買える事がわかれば転売する意味も少なくなると思うし、あまりに法外な値段をつければその人の信用が落ちるだけだから、それより今はロンベル領民に魔王国に付くメリットを感じさせるべきかな。」

「ゴウ様の深慮遠謀に我々感服するばかりにございます。

浅慮な意見を口にしたことを恥じるばかりにございます。」

「いやいや、良い意見だと思うよ。

私の事を思ってくれての事だし、凄く感謝しているから。」

「勿体無いお言葉にございます。」

「それより、お店の経営はお任せします。

私は他の所にも行こうと思いますので。」

「はっ!お任せください、この赤鬼、ゴウ様第一の部下として必ずや当店舗を類をみない店へと成長させてみせます。」

「あはは、無理はしないようにね。」

「お任せあれ!」

赤鬼の気合に訂正しづらい為苦笑いを浮かべるのだった。


帰りの列車にて・・・

「ゴウ兄、赤鬼さん第一の部下だったの?」

「カスミ、そんな事を聞いちゃいけない。

・・・おかしいな、クーラさんに店員を借りただけだったのに。」

いつの間にか部下を持つ身になってしまっていたのだった・・・

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