第251話 正式に降伏
「ふむ、ラニアン王国が北方への塩を止めたか。」
クーラの下にラインから塩の援助を求めてフリードが再び使者として来ていた。
「はい、降って早々にはなりますがどうか塩の輸送をお願いしたのです。」
「わかった、引き受けよう。」
「ありがとうございます。」
塩の確保が確定したのち、ラインはラニアン王国がロンベル侯爵の家督に口出しする為に領民を人質に取り、北方への塩の輸送を止めた事を領民達に広く伝える。
「王国は俺達に死ねと言うつもりか!」
「中央の奴等は田舎なんて興味が無いんだよ。」
「高い税だけ取りやがって!」
日頃の鬱憤も相まってラニアン王国への求心力は大きくそがれる、その上で魔王国が塩の援助をしてくれる事を伝える。
「おい、魔王とか言うけどラニアン王国より、人道的じゃないのか?」
「ライン様から布告が来ていたが、魔王国では貴族でも法の下に従う必要があるそうだ。」
「じゃあ、出鱈目な裁判は行われないのか?」
「そもそも魔王とか言うけど、何か悪いことされたか?」
これまで見た目で拒絶していただけで魔族から何かされた事は少ない、ましてや距離のあった北方では尚更の事であった。
そんな下地を作ったあとラインは領内に向け正式に魔王国に降る事を発表するのであった。
「我が領は今日よりラニアン王国を捨て、魔王国の傘下に入る!
だが安心するのだ!魔族と呼ばれる者は恐ろしい相手ではない!
見た目こそ我々とは多少の違いはあれど彼等は理性的かつ、人道的である!
傘下に入る我々を見捨てる事なく、また不当な扱いをしないと約束してくれた。
私は約束しよう!
魔王国になった我が領は今まで以上の発展を遂げると言うことを!!」
ラインの宣言は多くの領民の歓声によって受け入れられた事がはっきりとわかるのであった。
「式典が終わったみたいだし、オープンといこうかな。」
ラインの宣言により盛り上がる所で俺は駅をオープンさせ、それに付随する駅ビルも同時にオープンするのだった。
駅ビル内には食料品店も入っており、塩は勿論、海産物や肉、野菜が所狭しと並べられている、その上この世界にまだ馴染みが無い多くのスイーツも来客を今か今かと待ち構えているのだ。
「魔王国直営の店舗がオープンしました、沢山の品をオープン特価でご用意しております、今がチャンスですよ!
さあさあ新たな門出を、皆さんで祝いましょう。」
従業員をやってくれている鬼族の人達が店の外に立ち客引きをしてくれる。
「赤鬼さん、これは振る舞い酒です、皆さんに配ってください。」
俺は大きな酒樽を運んでくる。
「ゴウ様、振る舞い酒って、タダで配るんですか!」
「勿論、彼等が戦うことなく降伏した事を恥と感じてはいけません、これは新たな門出なんですから、皆さんが笑顔になれるようにすべきだと私は思うんです。」
「ゴウ様の寛大な御心に私達鬼族は平伏する限りにございます。」
「平伏しなくていいから、それより皆さんが見てますのでお酒を配ってください。」
「はい、お任せあれ。
剣神様が御親族、ゴウ様よりの祝の振る舞い酒だ。
酒の飲める者は集まれ。」
「おい、振る舞い酒ってタダなのか?」
「そうだ、あの御方がロンベル領民の為にご用意くださった酒だ、感謝して飲むといい。」
赤鬼が指し示す方向には奥に帰ろうとするゴウの姿があった。
「あれは人族じゃないのか?」
「そうだとも、人族だぞ。
とはいえ剣神様の御親族、人というより神に近いのかも知れん。」
「魔族の中に人族もいて、敬意を持たれるのか・・・」
「我々の祖先は人族と共存していたと聞く、我々が人族だからと蔑むような事はない、ましてや人の評価はその者の行った行動により判断するべしと、子供の頃から教わるからな。」
「その者の行動によってか・・・」
「そうだとも、それより酒を飲んでくれ、振る舞い酒が余ると俺達も立場が無い。
おーい、頼むよ!飲んでくれよ〜」
赤鬼の言葉に周りから笑いが起きる。
「なら、俺にも一杯くれ。」
「おう、飲んでくれ、これは旨いぞ!」
赤鬼が枡に注ぐと其処には透明な水のような物があった。
「これが酒か?水じゃ無いのか?」
「飲めばわかる!これを飲むと今までの酒じゃ物足りなくなる一品だ!」
「どれ。」
グッと呑む・・・
「ぷはぁ、これはキツイな、だが旨い。
芳醇な薫りとこの熱くなる喉越し。
もう一杯いいか?」
「もっと欲しいなら店で買ってくれよ、中で売っているからな、みんなも商品には限りがあるからな、買うのは早い者勝ちだぞ。
ほら飲んで無い人は飲んでみなよ。」
赤鬼の言葉に乗せられたのか、駅ビルは大盛況となるのであった。
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