第249話 使者帰る
その後、フリードはゴウに会う機会に恵まれぬままラインの下に帰還する。
「兄上、魔王国への降伏が認められました。」
「うむ、それで条件はなんだ?」
「魔族と人を法の下に平等に扱う子供という事でした。」
「平等?魔族を優遇ではないのか?」
「はい、それどころか人族として受け入れられない法があれば申し出る事も許されました。」
「魔王とはかなり寛大な方なのだな。」
「はい、器の違いを感じました。
たぶん我らが裏切った所で対処する事は可能なのだと。」
「フリード、魔王軍はそれほどに精強に見えたか?」
「間違いなく精強にございます。
また、種族の違いによる攻撃の違いを考えましても人族では対応の難しい事も多いかと。」
「空を飛ばれるだけでも対処に苦労するからな。」
「もし兄上が魔王国と敵対すると言うなれば全力で反対させていただきます。」
「お前がそれほど言うとはな。
まあ裏切る必要はあるまい、ラニアン王国はすでに風前の灯。
馬鹿な王子の尻拭いに命をかける必要はあるまい。」
「そうですね、あと魔王軍内でお聞きしたのですがハーツ王子はその一物を切り落とされ、王家の血を残せなくなったとか。」
「なんと!あの馬鹿王子がそのような事になっていたのか!
これはいい、多くの民を死に追いやった罪をその身で背負ったのだな。」
「ですが、笑ってばかりもいられません。」
「どうした?」
「ハーツ王子に子ができぬとなれば、プレザがクロエ王女と結ばれた暁には我らロンベルの血がラニアン王家に入ってしまいます。
魔王国に疑われる恐れもありますので何か対策を立てる必要があるかと思います。」
「たしかに・・・ 痛くない腹を探られるのは嫌な物がある。
ましてやお前が敵対したくないと言い切る相手だ、僅かな疑念も持たれたくない。
・・・よし、プレザの絶縁を公式に発表する。」
「兄上、それだとプレザが戻って来る事も出来なくなりますが?」
「仕方無かろう、勝手な真似をするプレザが悪い。
弁明の為に帰ってくれば良しとするが、戻る事もせぬようなら、プレザは我等の弟、いや一族にあらず。」
「わかりました、そのように対処致します。」
「愚かな選択をせぬことを願うばかりだ。」
ラインとフリードはため息を吐く、家を出ていったとはいえ、弟なのだ。
出来ることなら追放したくはない。
だが、兄である前に領主なのである、領民を守る為には弟といえど非情にならなければならないのだった・・・
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