第248話 酒宴

「これは・・・」

宴に参加してフリードは驚愕する。

見たこともない料理が並べられているのだ。


「これが魔王国の料理なのか・・・」

あらためて文化の違いを感じる。

「これは創造神様の世界の料理だそうだ。

我等も食するのを楽しみにしていたのだ、フリードも楽しむといい。」

「創造神の世界の料理ですか?それは神の世界の料理という事ですか?」

「うむ、厳密に言うと違うそうだが故郷の料理という物だな。」

「それはさぞ素晴らしい料理に違いないですね。」

「そうだろう、どのような味がするか楽しみなのだ。」

クーラの絶賛する料理を食べないという選択肢は無くなった、フリードは覚悟を決める。


乾杯の合図があり、食事へと手を伸ばす、恐ろしいのは生魚を切っただけの料理である。

ライン領には海が無く、魚は高級品なのだが、生で食べるなど想像も出来ない。

恐る恐る、生魚にフォークを伸ばす。


「あっ、もしかして生魚苦手ですか?」

フリードは声をかけられた方向に向くと人族が立っていた。

「おや、貴殿は人族ですか?」

「ええ、クーラさんの所でお世話になっているゴウと言います。」

「魔王様の所でお世話になっている人族がいたのですね。」

「ええ、それで生魚が苦手なら交換することもできますよ?」

「いや、魔王様が用意してくださった物だ、食べねばなるまい。」

「それでしたら、その小皿にある醤油、タレにつけて食べてください。

美味しいですよ。」

「ありがとう、食べさせて貰うよ。」

フリードは人族と話した事もあり、緊張が少し和らぐ。

そして、一口・・・


「これは!」

生魚だが臭みは無く、甘辛いタレが魚の身の味を引き立たせていた。

「素晴らしい!!こんな料理があったなんて!」

「お口にあったようで良かったです。

おっと、呼ばれているみたいですのでこれで失礼します。」

食べれなかった時に備えてくれていたのだろうか、近くで様子を見ていたゴウが呼ばれた方に立ち去っていくのをフリードは礼も言えずに見送るのだった。


「失礼な事をしてしまったな、どこかで会えば礼を言わなければならない・・・

うん?待てよ、何故あの男は魔族だらけのこの場にいるんだ?」

フリードは人族がこの場にいる事を不自然に思う、ポメが降伏したとはいえ魔族の重鎮が並ぶこの場に簡単に入れるとは思えない。


その事実に気づいた時、自分の失態を知るのであった・・・

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