第245話 ライン・ロンベル侯爵

「なに、プレザの奴とクロエ王女を婚姻させたいだと?」

「はっ!現在プレザ殿はハーツ殿下の腹心としてお仕えしております、その信頼に応えるため、ついてはロンベル侯爵家との縁を深める為にと陛下も許可を出されたようにございます。」

ヘリオスが送った使者がラインの下に来ていた。


「・・・愚かな、プレザは情勢の一つも見れないのか、これだから甘やかされた末っ子は。」

「えっ?」

「プレザは侯爵家の職責を放棄し、逃げた者だ。

我がロンベル侯爵家とはすでに無縁の関係、陛下や殿下が迎え入れるのは勝手だが、それは我が家を侮辱する行為だとよく伝えてほしい。」

「お待ち下さい!陛下にロンベル侯爵を侮辱するつもりはございません!

プレザ殿との婚姻もロンベル侯爵家との関係強化を願っての事にございます。」

「ならば、家を出て冒険者になったプレザを何故抱え込むような真似をする。

少なくとも貴族姓を捨てている者を側に置く前に当家に確認を取るべきであろう。

それを飛び越え婚姻などとは侮辱以外の何物でもない。

使者殿もよく陛下にお伝えください。」

「お待ちを!誤解です!」

「使者がお帰りだ。」

ラインはそれ以上話を聞くことなく使者を追い返す。


「兄上、良かったのですか?」

次兄のフリードがラインに確認する。

「何かだ?」

「王家と繋がりを持つ機会だったのでは?」

「いらぬな。

王家が五男に繋がりを持つなどとは家督に対して口出ししかねんだろ。

それにラニアン王国に従う町は数えるほどだ、すでに敗戦濃厚の王国の王家と繋がってどうする。」

「ならばどうするのです?」

「魔王国に降る。」

「魔王国にですか?流石にそれは受け入れられないのでは?」

「いや、その異形ゆえ人族が嫌い差別こそすれど、魔族側から何かしてきた事は殆ど無い。」

「それは本当ですか?」

「本当だ、歴史を調べれば調べるほど魔族の攻撃性は低い。

その上、諜報から攻め落とされた町の様子も確認したが、混乱こそあれど人が迫害されることは無く、法により統治されている。

むしろ人の領主の時より公平な治世かも知れん。」

「なんと・・・」

「あと未確認だが、人族で魔族と友好的にしているものが現れたらしい。」

「人族で魔族と友好的ですか?」

「ああ、もし本当なら我等はその者を介して領地の安泰を願えるやもしれん。」

「ありえますか?そのような事が?」

「今調べている所だが・・・

今の所、魔族と停戦の橋渡しをしようとした者がいた事がわかっている。

同一人物かはわからぬが、魔族に影響を与えれる者なら是非接触をはかりたいものだ。」

ラインは領土の安泰されるなら降伏もやもなしと、ラニアン王国を切り捨てる覚悟は出来ていた、今の状況で王家と繋がるなど邪魔でしかないのだった。

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