第244話 父と子
「おお、ハーツ・・・
なんと痛ましい姿なのだ・・・」
ボロボロになったハーツを見たヘリオスは大粒の涙を見せながらハーツを抱きしめる。
「父上、申し訳ありません・・・」
抱きしめられたハーツもまた涙を流していた・・・
「・・・なんと、そのような目にあったのか。
魔族め!なんと非道な真似をするのだ!」
一物を切り落とされた事を知ったヘリオスはさらに涙を流す。
「ハーツ、安心せよ。王太子はお前のままだ。」
「しかし、父上、このような姿になってしまった私に政治はおろか子孫を残す事も・・・」
「なに政治は頭と口があればいい、子孫もクロエが産む子を養子に迎え入れ後を継がせれば良いだけだ。」
「そうですね、クロエの子を我が子に迎え入れればいいのですね。」
「そうだ、となるとクロエには早く夫を娶らせねばなるまい。」
「それにつきましては私から推薦したい者がおります。」
「誰だ?」
「はい、プレザ・ロンベル。ロンベル侯爵家の五男にございます。」
「五男から少々身分がのぅ・・・」
「父上、プレザは私がこのような姿になっても付き従ってくれた者にございます。
腕を失った私にとって腕となるべき者と思っております。」
「その忠節は認めよう、だが今の戦局を思うにクロエの夫にすべきはチカラある者にするべきではないか?」
「父上、クロエが産む子は私の子でもあるのです。
私が信じれる者の子というのは大事な事かと。
それに五男とはいえ、ロンベル侯爵家は北方の勇、魔王軍を破る為にも結びつきを強くすべきかと。」
プレザの実家であるロンベル侯爵家は北方に領地を持ち、武勇に長ける家なのだが、今回の魔王軍の侵攻に対して、北の防衛に入ったまま援軍に来ていない、ヘリオスとしてもなんとかして動かす必要があった。
「わかった、ハーツがそこまで薦めるのだ。前向きに検討しよう。」
「父上、ありがとうございます!」
「待て待て、認めるのは現ロンベル侯爵家当主、ライン・ロンベルが援軍を送ってきてからだ。」
「ライン侯爵は援軍に来ていないのですか?」
「ああ、この戦を無駄な物と言って全く動いていない、この国難を収めた暁には何らかの罰を降す必要があるのだが・・・」
「クロエとの結婚で恩赦という形で落ち着けると言えば、その重い腰も上がるのでは無いでしょうか?」
「うむ、しかしまずは打診からだ、それまでは内密にするのだ。」
「父上、不甲斐無い私の頼みをお聞きくださりありがとうございます。」
「いやお前が生きていてくれただけで何よりだ、王家の定めとしてバラバラに逃げ延びたが、その事を後悔せぬ日は無かった。
ハーツ、クロエが生きて私の下に帰って来てくれたのだ、これ以上の幸せはあるまい。」
其処にあったのは王としての顔では無い、一人の父親の顔があった。
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