第241話 降伏の城主
「城主が降伏して来たか、礼を持って受け入れよ!」
クーラは重臣を始め、各兵士に整列させワンスキーを迎える。
「忝い、降伏の将として感謝致す。」
「城主ワンスキー、お主の戦いぶりは聞いている、健全な状態なら我軍の苦戦は免れぬ所であったろう。
武に生きる者として敬意を表する。」
クーラの声に魔族一同敬礼をする。
「魔王の配慮に感謝致す、我が身はどうなれどポメの住民には寛大な処置をお願いしたい。」
「勿論だ、これよりすぐにポメに向けて食料支援を行う、おい、すぐに運び込め。」
「はっ!」
既に数十台の馬車一杯に食料が用意されており、ワンスキーの降伏とともに支援が開始されるのだった。
「なんと、魔族には人の心が無いと思っていたのは我等の狭量だったのか・・・」
ワンスキーは目からウロコが落ちる思いだった。
「我等は野蛮な種族ではない、元々ポメの町は魔族と人が手を取り作り上げた町だ、我等としても思い入れのある町、今回攻め込む事には複雑な思いもあったのだ。」
「ポメが魔族とともに作った町?」
「ワンスキー殿までは伝わっておらぬのか?
数百年前の領主に魔族嫌いの者が就任して、魔族を追い出したのだ。
当時争う事を望まなかった魔族はなくなく町を離れたとある。」
「そんな歴史は伝わっていないが・・・」
「消したのだろうな。
まあ信じるか信じないかは構わない、ただ我等は意味も無く人族と争うつもりは無い。
今回の戦はラニアン王国王太子が我等の神の神殿に落書きを刻み込んだ事に端を発している。
我等としては王太子の身を確保出来ただけで今回の戦は終わりにしてもいいのだ。」
「ハーツ王太子が戦の原因?」
「なんだ、知らなかったのか?
我が国は戦争する前に王太子の身柄の引き渡しを求めたのだが?」
「いや、我々には聞かされていない、魔族がいきなり奇襲をかけてきたとか・・・」
「王都に攻め込んだ時に使者を出し話し合いをしたのだが・・・
どうやら伝えていないようだな。」
ワンスキーの動揺からは聞いていない事は確実であった。
「他の町はどうなっていますか?」
「他の町か?降伏した町はそのまま暮らしている、抵抗した町のいくつかは施設のいくつかは破壊したが概ね無事に暮らしている。」
「虐殺とかはしていないのか?」
「我々はそんな野蛮な真似はしていない、武に生きる我等は武器を持つ者を倒すのであって、平和に暮らす者を嬲る恥ずかしい真似はしない。」
「失礼しました、どうやら私の耳に入ってきたことは嘘に塗れていたようにございます。」
「ラニアン王国としては我が国が非道の国にしたかったのであろう。
疑われるなら他の町を見に行ってもいいぞ。」
「いえ、それには及びません、魔王様から感じるお言葉に嘘を感じる事はありませんでした。
どうかその寛大な御慈悲をポメの民にも注がれるよ、深くお願い致します。」
「良かろう、ただポメの民に寛大な慈悲を注ぐのは私ではない。」
「魔王様では無いのですか?では誰が?」
「ゴウ様だ、剣神様の御親族であり、創造神様の技を継ぐ偉大な御方だ、ワンスキー殿も感謝するならその御方になされよ。」
「ゴウ様ですか?何処かで聞いたような・・・」
「ポメの町で人々を助けようとしたら訴えられてそうだ。」
「なんとそれは・・・
申し訳無い限りです。」
「それでもゴウ様はポメの住民の命を救おうとなされたのだ、この事を住民によく伝えるように。」
「はっ!命続く限り伝えるとお約束致します。」
「うむ、ワンスキー殿、長い籠城で疲れたであろう、一席用意した、今宵はゆるりと食事を楽しみにされよ。」
クーラはワンスキーを連れて別室に用意した食事に案内するのだった。
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