第240話 捕虜解放

「えっ?解放?

解放されるんですか?」

捕虜達は解放されると聞いて嫌そうな表情を見せる。


「そうだ、ポメに帰るなり別の町に行くなり好きにするといい。」

「ポメに帰っても食べる物も無いし・・・

お願いします、ここで雇ってください!

何でもしますから!」

「いやいや、お前達捕虜で捕まっていたんだぞ、おとなしく町に帰れよ。」

「帰ってもどうしようもないんです、そうだ家族も連れて来ますから雇って下さい。」

「そんな事を言われてもな・・・」

中々ポメに帰ろうとしない捕虜に頭を悩ませる。


「仕方ない、お前達のチカラでポメに降伏を促してこい、そうしたら町の住民ごと助けれるかもしれないからな。」

「あっ!そうか!ポメが降ればいいのか!」

「魔族との感傷を思えば難しいかも知れんが・・・」

「いえ!絶対に成し遂げてみせます!」

「わかった、わかったからさっさとポメに帰れ。」

捕虜を追い返すために話した言葉が捕虜達に変なやる気を植え付けたようだった。


「なに?捕虜が解放されただと?」

「はい、一般兵のみならず近衛兵も解放されたようです。」

「・・・どうなっているのだ?

解放すればすぐに武器を手に取り兵士になるのがわからないのか?」

ワンスキーは首をかしげる。

「ワンスキー様、魔族は我等に兵糧攻めをするのでは無いでしょうか?」

「それはあり得る、捕虜になった者から食料事情を聞き出したのやも知れんな。」

ワンスキーに取って厳しい策であった、目の前で解放された兵士を受け入れない選択は無い。

受け入れなかった場合、町の中にいる家族が騒ぐのが目に見えているのだ。


だが受け入れるとなると食料問題がさらに悪化する、既に詰んでいる局面のポメになすすべは無かったのだ。


その夜、騒ぎが起きる、解放された兵士達が城門を襲撃、修復不可能なまでに破壊したのだ。


「どうなっているのだ!何故城門を破壊する!」

ワンスキーが対応しようとしたときには城門は壊されていたのだ。


「ポメは降伏するべきだ!

魔族は悪い奴じゃないぞ!」

「見た目で判断するな!彼らは我等を助けに来たのだ!」

「腹を満たしたいなら魔族に降れ!」

捕虜達は口々に魔族への降伏を促す・・・


「・・・致し方無い、城門無くば籠城も出来ん、我等は降伏致す。」

「ワンスキー様!」

「仕方ないだろう、だが住民の事は魔族にしかと言っておく。

馬を引け!」

ワンスキーは表に向かい・・・


「ポメ城主、ワンスキーである!

これよりポメは魔王軍に降伏する!

道を開けよ!」

「城主が降伏したぞ!」

「これで家族が救われる!」

裏切った者達は心の底から救われる事を喜んでいるように感じる。


「いったい魔族はこの者達に何をしたのだ・・・」

ワンスキーはわからないままに魔王軍に向かい進んでいくのだった。

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