第236話 捕虜達は・・・
「思ったより早く片付いたな。」
施設に入る事の出来ない為、降伏した者、捕らえられた者達は分けられ、監視下に置かれていた。
「本当に命は助けてくれるんだろうな?」
降伏した者からすれば、仕方なかったとはいえ、武器も無く、魔族に捕縛される現状は恐怖でしかない。
何度確認しても変わることは無かった。
「何度目の質問だ?
剣神様の御親族がお前達人族の助命を頼まれたんだ、魔王様がそれを受け入れた以上、おとなしくしてたら命は取らねぇよ。」
「本当だよな!」
「くどいって、少なくとも俺達には殺すなってきつく言われてるからな、おとなしくしてたら殺さねぇって。
ただ反抗するなら殺してもいいみたいだから、死にたいなら反抗してくれ。」
兵士は冗談のつもりで話していたが捕まっている者からしたら冗談では済まない、大きく首を振って無抵抗をアピールしていた。
「おい、食事だ。適当に取って食べろ。」
無操作に渡されたのはゴウが提供したパンだった。
捕虜の数が多いため、用意されたパンの数も適当だが・・・
「足りなかったら言え、追加を持ってくる。」
「えっ?追加も貰えるんですか?」
「剣神様の御親族は慈悲深いのだ、降ってきた以上、戦は終わりだと言ってお前達の食事も提供してくださったようだ。」
「敵にまで・・・」
自分達は魔族にここまでした事は無い、敵だと殺す事はあれど人として扱ってこなかった事を恥ずかしく思う。
「まあ、俺達はもっと美味いものを食べさせて頂いているからな。
俺達はパンで喜ぶお前達を見下すだけさ。」
兵士は笑うのだが、それがただの冗談に感じる、捕虜の自分達は食事の美味しさを求めれる立場ではない、気落ちした自分達への配慮だと感じる。
「お、おい、このパン・・・」
「どうした!パンに何かあったのか!!」
最初に食べた者の反応に不穏な空気が一瞬走るのだが・・・
それは一瞬だけだった。
「う、うまい、美味すぎる!この柔らかさ、中に入っている具材、どれを取っても美味い!」
最初に食べた男は次々にパンを手に取り食べ始める。
「おい、一人で食うな、俺達にも分けろ。」
このままでは食べ尽くされそうな勢いに他の者も食べ始め・・・
「うまい!こんなうまいものを食べていたのか!」
自分達が籠城で粗食に耐えている時に魔族はこれほどの物を食べていたとは・・・
あまりの差に思わず涙が溢れる。
「あー、まあ、俺達も昨日からなんだが・・・
って聞いちゃいないな。」
一心不乱に食べる様子に兵士も伝える事を諦めるのであった。
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