第235話 突撃開始!
「クーラ様、愚か者共がこちらに向かって来ております。」
「なんと町から出てきたか!」
「すぐに殲滅致します。」
「まて、すぐに叩けば町に戻って立て籠もるだけであろう、引き付けて一気に叩く、王都から連れてきた兵は敵後方に回らせ退路を断て。」
「仰せのままに。」
町から距離のある建物に向かい一直線に来ている、クーラが後方を取ることは難しく無かった。
「攻め立てよ!」
クーラの言葉に魔族は奮い立つ、魔王自ら出向いての戦なのである、士気があがる、ましてや前日の夜に美味しい食事とゆっくり休める寝所を得たのだ、体力気力ともに最高潮であり、すぐさま部隊を展開し、攻撃を開始するのであった。
「ハーツ様!敵が後方に回り込みました!」
「気にするな!それより建物を目指すのだ!」
ハーツはいち早く建物に逃げ込む為に前方に入り指揮をとっていたのだった。
「ハーツ様!後方が着いて来ておりません!」
「振り返るな!今は施設に向かう事を優先するのだ!」
幸いと言っていい程、前方の魔王軍の抵抗が少ない。
目の前に建物とその前に広がる整備された広場が広がっていた。
「見えたぞ!そのまま駆け込むのだ!」
この時よく見れば広場にいないはずの魔族がいた事に気付いたのかもしれない、だが少し後ろに下がり指揮をとっていたハーツには見えなかったのだ。
駆け抜ける馬の勢いそのまま侵入出来ない壁に激突して・・・
「ぎゃっ!」
「ぐはっ!」
先頭を行く者達は見えない壁に全速力でぶつかり、弾かれ吹き飛んでいく。
「な、なにがあったのだ!」
ハーツは馬を止めるのだが、先頭を走っていた者達は散々な状態だった、そのまま命を失った者、生きているものの手足が変な方向に曲がっている者もおり、一目で戦える状態でないことは明らかであった。
そして、後方から迫る魔王軍の猛攻を受ける事になる。
「くっ!通れぬのなら致し方無い。
この見えぬ壁を背にして防御陣を張れ!」
ハーツは即座に軍を立て直そうとするのだが・・・
「ハーツ様!両側面からも敵が現れました!」
「防げ!防ぐしかないのだ!
プレザ、プレザはいるか!」
「はっ!」
「お前はあの平民と親しかったのだろう、お前なら通れるかもしれん、使者として赴く、我等を迎え入れるようにするのだ。」
「わかりました、すぐに・・・」
プレザが施設に向かうのだが・・・
「ぎゃあぁぁぁ!!」
辺り一面に悲鳴が聞こえる。
「何事だ!」
悲鳴の聞こえた方向に振り向くとそこには広場から攻撃をしてきた魔族の姿が見える。
「何故魔族が中にいるんだ・・・」
広場を始め施設内には魔族が入れないからこそ此処に向かっていたのだ、魔族がいるとなると自分達が何処に向かえばいいのかすらわからなくなる、兵士達は持っていた者は武器を落とすほどに士気が低下したのだ・・・
「お前達、死ぬ気か!戦え!戦うのだ!!」
ハーツが声を上げるが既に下がった士気は上がることは無い・・・
「ラニアン王国兵に告ぐ!
我等は降伏する者を受け入れる用意がある!
降る者は武器を捨て地面に座るといい!
王太子ハーツ以外の者の命を取るつもりが無い事を我等の神に誓おう!!」
クーラの声が響くとラニアン王国の兵士の中に武器を捨て座る者が現れ始める。
「お前達、魔族を信じるな!人族の絶滅を狙っているのだ!!
立って戦え!!」
ハーツは必死に声を荒げる、先程の降伏勧告ですら自分の命の保証は無いのだ、何としても戦い切り抜けなければ自分の命は無い。
「この戦争の元凶ハーツの身柄だけが我等の目的である!
それ以外の者に興味は無い!
この戦争は王太子ハーツが我等が神の神殿に聞くに堪えぬ世迷い言を落書きした事が発端である!
諸君等はハーツの命を守る為だけに犠牲になっているだけなのだ!」
「嘘だ!魔族の言葉を信じるな!
奴等は武器を捨てたお前達を殺すつもりなのだ、今一度戦い町に戻るぞ!」
ハーツが声を上げるが一人、また一人と武器を捨てて座っていく・・・
「ハーツ殿下、既に決着がついたようにございます、王太子としてお覚悟ください。」
「待て!お前達まで何を言うのだ・・・」
側近達まで降る気になってしまっていることに気づく・・・
ハーツが一歩下がるのだが・・・
「殿下、お許しください。」
側近達はハーツを捕縛するのだ。
「止めろ、ブルタス!お前には目をかけてやっただろ!裏切るとは恥ずかしく無いのか!」
「申し訳無いとは思います、ですが既に勝ち目はありません、ここは降るしか生きる道はございません。」
「私は殺されてしまうのだぞ!離せ!離さんか!
プレザ!プレザは何処だ、私を助けてくれ!」
ハーツはプレザに助けを求めるのだが、そのプレザも既に側近に捕縛されていたのだった。
「プレザ・・・」
その姿を見たハーツは心が折れる、助けを縋る相手がいない事に気付いたのだ・・・
「全軍、武器を捨てて座れ!
降伏するのだ!!」
側近達が上げた声にまだ立っていた者達も武器を捨てて降伏するのだった。
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