第226話 ポメの現状
「おい、あの平民はまだ来ないのか!」
ハーツは苛立ちながら港を見るがいまだに船の姿は影も形もない。
「はっ!まだ来ていないとの事です。」
「まったく何をしているのだ、奴の為にヨクボを死刑にしたというのに、何時になったら食料を持ってくるのだ!」
ハーツは手にしていたグラスを床に叩きつける。
ハーツが苛立つのも無理はない、魔王軍は攻撃こそしてこないものの、町を取り囲み他所との往来が出来ない、ポメでは既に食料の枯渇が現実味を帯びてきていた。
「こうなればプレザ様に今一度ジョージア王国に行ってもらい、連れてきてもらうしか・・・」
「何を言う!プレザにそのような危険な真似はさせれん、今やプレザは町の英雄なのだぞ。」
先日の功績を大々的に発表した為、英雄に祭り上げられたプレザは冒険者上がりの者として、数少ない士気を上げる要素となっていた、今プレザが町を離れると折角作った求心力を失いかねない、ハーツとしては戦後も考えるとそれは出来ない選択となっていた。
「しかし、既に住民の中には食料が尽きた者も出始めたと聞きます、なんとかしなければ魔王に軍降る者も出るかもしれません。」
「魔族は人を喰うというではないか、魔王軍に降って、食べられるとでも言うのか?
バカバカしい・・・
いや、愚かな平民はそれすら理解出来ないかもしれぬな、魔王が人を喰う話を今一度広めよ。」
「・・・わかりました、ですが食料については何か手立てを。」
「くどい!あの平民が来れば解決するのであろう、それまでの辛抱だ。」
ハーツは思考停止となっていた、勝ち筋が見えていたにも関わらず、敗戦のような状態になっている事を受け入れられなかった・・・
「マッサさん、今一度船を用意する事は出来ないのですか?」
プレザはマッサの所に来て船を手配出来ないか確認していた。
「無理です、私の船は廃船になってますし、他に渡海できるような大型船を持っていた者はすでにポメから逃げております。
ゴウさんがこちらに来ることを願うだけです。」
「中型船では向かえないか?
港にいくつか停泊している船があるが?」
「プレザさん死にたいのですか?
大型船ですらゴウさんに助けられなければ死ぬところだったのです、中型船ではひとたまりもない。」
「だがこのままでは町の人全てが飢えて死んでしまう、無理でもやらなければならない。
マッサさんもわかっているだろ?」
「それは・・・
わかりました、中型船なら私も持っています。
いざとなれば、これで逃げるつもりだったのですがね・・・」
「ありがとう、マッサさん!」
「さあ、それなら準備を急ぎましょう。」
マッサは覚悟を決め、再びジョージア王国を目指す事にするのだった。
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