第222話 手合わせ
「ここでやるんですか?」
城の訓練所に入るとそこは人気が無かった。
「いつもなら訓練をしている者で溢れていますが、今日はゴウ様を迎える為に皆が準備をしてますから他に出払っています。
静かに手合わせするには丁度いいと思います。」
クーラは竹刀を持ち、オレにも差し出してくる。
「竹刀があるんですね。」
「これは剣神様が訓練中の怪我を少なくする為に考案なされたと聞き及んでおります。
武神様は刃引きした物を推奨していた様子にございますが、そちらになさいますか?」
「いえ、竹刀でお願いします。
私は強くないものですから。」
「わかりました、怪我の無いようにしましょう。」
俺は呼吸を整え、構えるのだが・・・
構えた瞬間にわかった、クーラ明らかに強者であると、殺意も闘志も感じないがその構えから発する気配に俺は全身から汗が吹き出してくる。
「ゴウ様、先手をお譲りします、どうぞ打ち込んできてください。」
「お言葉に甘え、胸をお借りします。」
「ええ、いつでもどうぞ。」
クーラも力量差は気付いているだろう、俺はあらためて一呼吸して自分に気を整える。
「桐谷ゴウ、参る!」
俺は全力で駆け間合いを詰める、自分が覚えた桐谷流は速さの中に攻めを見出す剣技である、足に全力を投入、一気に詰め・・・あれ?
俺は勢い余って訓練所の壁に激突する。
「ゴウ様、大丈夫ですか?」
思わぬ動きにクーラから心配の声が上がる。
「だ、大丈夫です、こんなに早く動けると思ってなくて・・・」
「あれ程足に魔力を込めたらそうなりますよ。」
「魔力?」
「おや無意識でしたか?ゴウ様の膨大な魔力を足に集めて一気に放出してましたよ。」
「・・・ふむ。」
俺はあらためて自分の魔力というものを認識する、こちらの世界に来て色々な物を喚び出す事が出来るのは魔力のおかげだと考える、それを瞬間的に足に集めたということか・・・
今度は意識して足にチカラを込める、先程より少なくするのだが、自分でも感じれる何かが足に集まっているのがわかる、俺はそのまま少し駆けると予想より早い動きが可能になっていた。
「クーラさん、もう一度手合わせをお願いします。」
「ええ、かまいませんがゴウ様お怪我はありませんか?」
「大丈夫です、今はこのチカラを使ってみたいんです。」
「わかりました、どうぞおこしください。」
クーラが構えた事を見て、俺はあらためて集中する。
全力を込めるのではない、クーラまで一足飛びできるぐらいに抑えるのだ。
「行きます!はっ!」
俺は一気に間合いを詰める。
「桐谷流初伝、ナズナ!」
俺は奥義ともにいえない桐谷流の技を放つ。
これは速さの中、一気に間合いを詰め、足を薙ぎ払う技である、求められるのは速さのみであり、俺が実戦でまともに使えそうな唯一の技でもあった。
「ふっ!!」
クーラは俺の剣に合わせるように足元に竹刀を突き刺し、俺の竹刀をそのまま受け止める。
「あ、あら・・・受け止められたましたね。」
「いやはや、見事な物です、初見で捌けるものは多くないでしょう。」
「あはは、私が使える技はこの程度ですよ。
あとは実戦でお見せできないレベルです。」
「ご謙遜を。」
「本当ですって、アキラさんにも呆れられた程度ですから、あと自慢出来るといえば型は綺麗に覚えていると褒められたぐらいでしょうか?」
「型とは桐谷流の型でしょうか!!」
俺の言葉にクーラは食いついてくる。
「ええ、一応奥義も型だけはいくつか出来ますよ、ただ実戦で使える身体捌きが出来ないというか・・・」
「是非!ご教授願えませんか!!」
クーラは俺の手を取り願い出てくる。
「は、はい、いいですけど・・・」
「伝説の桐谷流を学ぶ事が出来るなんて、今日は素晴らしい日だ・・・」
どうやらクーラは桐谷流への憧れが人一倍強いのだと感じる。
「クーラ様、皆がお待ちです、ゴウ様を解放なさってください。」
クーラの部下と思われる者がクーラを呼びに来ていた。
「ラム堅いことを言うな、今日は素晴らしい日なのだぞ。」
「それはクーラ様以外も同じ事にございます、ミユキ様をはじめ皆さんには先にご支度に移って頂きました、クーラ様、ゴウ様もご支度をお願いします。」
確かに他の人を待たせる訳にもいかないと俺達は支度に移るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます