第216話 クロエの説得
「お父様、私の話を聞いてください!
非常に大事な話を伝えきれていないのです!」
ボルト達使者が帰ったあと、クロエは殴り込むようにヘリオスのもとを訪ねていた。
「クロエ落ち着きなさい、そんな様子では嫁の行き先に困るな。」
「今はそのような事を言っている場合ではありません!
お父様はお兄様をどうなさるおつもりですか?」
「どうするも何も無い。ハーツは王太子のままだ。」
「お父様、お兄様が立て籠もるポメは魔王軍に囲まれ陥落寸前と聞き及んでいます、このままではお兄様はどちらにしても・・・」
「なんだと!魔王軍は退いたのでは無いのか!」
「ルデンにいた魔王軍は話し合いの末兵を退いてくれましたがポメの方には向かっていませんので囲みは続いたままだと思います。」
「なんと・・・ならば今一度交渉に向かいポメの町の囲いを解かせねばなるまい。」
「お父様、交渉と言いますが何を対価に交渉するおつもりです。」
「・・・賠償金とかでは無いのか。」
「魔王国は金銭の話を持ち出しませんでした、今回兵を退いた事とてお兄様を王族追放する話のもと、一時的に退いただけと考えるべきです。」
「なんだと!ジョージア王国に敗れ兵を退いたのでは無いのか!」
「誰がそのような事を・・・
ジョージア王国とて大軍に海を渡らすには時間がかかります。
私が向こうにいる短期間で兵を起こすなど無理な話です。」
「ぬっ・・・
つまりハーツの王族追放に従わなければ、ポメを無理矢理落とし、ハーツの命を取るつもりなのか!」
「はい、それにポメの町は現在食料も尽きているはずと予測されています、籠城を続ける事すら長くは出来ないかと。」
「クロエ、ポメの状況に詳しいがジョージア王国はポメを調べたのか?」
「はい、私を庇護してくれたお方が一時はポメを救おうと手を貸してくれたのですが・・・」
「ですが?」
「ポメの町で謂われない罪に問われ訴えられた為、引き上げたようにございます。」
「一度救おうとしたくせに引き上げたのか!
何という無責任な奴だ!」
「お父様、そのような事を言ってはなりません、そのお方は身分こそ平民でありながら、魔王国と交渉する事ができ、ジョージア王国では国賓として遇されているお方なのです。」
「何故そのような者を両国が優遇しているのだ。」
「そのお方は見たことの無い移動手段を作ることができ、様々な物を生み出す事の出来るお方なのです。
海を安全に渡ることも、大地を素早く動く事も全てそのお方があっての事なのです。」
「そのような者がいるのか・・・
ならば我が国の為に働かせば良かろう。」
「お父様、両国が遇するお方をどうやって働かすのです。」
「所詮平民、褒美を恵めば良かろう。」
「金銭で動くようなお方ではありません。
それに私の命を救ってくれたお方なのです、どうか礼をもって迎えてもらえないでしょうか?」
「クロエの命を救ったのか!」
「はい、ジョージア王国に向かう時に魔物に襲われ、あと少しで魔物のエサになりそうな時に駆けつけてくれて助けて頂いたのです。」
「なんと、ならばこそ城に呼び褒美を授ける必要があるな、誰かその者を城に呼ぶよう使者をだせ。」
「お待ちください、私の意見をもう少し聞いてください。」
「なんだ?」
「私がそのお方、ゴウ殿に嫁ぎ縁を深めようと考えております。」
「クロエが嫁ぐだと!ならんならん!!
お前をどこの馬の骨かもわからぬ奴に、ましてや平民に嫁がせるなどあっていい話ではない!!」
クロエの提案をヘリオスは一言で拒絶するのであった。
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