第214話 ヘリオスの言い訳
「・・・魔王国の言う事を信じてはならん、あの者共は人になりそこね、人を妬む卑しい存在である。
使者殿が何を聞いたかはわからぬが、それは全て嘘である。」
ヘリオスはクロエの言葉に多少なりの落ち着きを取り戻すものの魔族の言葉に従い可愛い息子を追放するなどするつもりは無い、人が抱く魔族への嫌悪感を煽り誤魔化そうとする。
「たしかにルデン教の教えにも魔族の崇める神は邪悪なる者との表記があった気が致します。」
古代宗教であるルデン教は細々と伝わってきており、その中では創造神は世界を創造しておらず、ルデンが世界を創り、統治していた所に侵攻してきた暴虐の神と記載されていた。
「そうであろう、元来人族と魔族が同じ神を崇拝するはずが無い、奴等の神殿にある神は邪悪なる者なのだ。
ハーツはそれに気付き、魔族を制するつもりで行った事であろう。」
「・・・その話が、真実だとしてもハーツ様が浅慮だったと言うしか無いでしょうな。」
「たしかに浅慮であるが、ハーツもまだ若い時には許せぬ激情を制する事が出来ぬ時もあろう。
それを導くのが重臣達の役目と思うが如何に?」
「耳が痛いお話にございます。
そもそも軍部が魔族風情に負けた事が原因にございます。
新たな者をその職につけ、改善をはかりたいと存じます。」
「うむ、平和な時が長すぎ軍も弛んでおったのだろう、以後このような事が無いように立て直しをはかるのだ。」
ヘリオスは一定の納得を得れたと確信し内心一安心するのだった。
「お父様、それだと何も解決しません!」
「クロエ、黙っていなさい、そもそも女が政治に口出しすべきでは無い、誰かクロエを部屋に連れていき休ませるのだ。」
ヘリオスはこれ以上、ハーツに不利な情報が出ないよう、クロエを別の場所へと連れて行く。
「なるほど、ラニアン王国の方針がわかりました。
この事をふまえ一度確認に戻りたいと思います。」
ボルトはヘリオスの対応を見て見限る決断をしていた。
「使者殿には少々お恥ずかしい姿をお見せしましたな、今後も我が国と良い付き合いをお願いしたいな。」
「私にはそれを決断する権限がございません。」
「そうか、なら良しなに頼む、おい使者殿に。」
ヘリオスが手を上げると高価な宝石が入った袋を渡される。
「これは?」
「邪魔になる物でも無いでしょう、なに少々恥ずかしい姿を見せてしまった詫びとお考えください。」
「そうですか、わかりました。
しかとアリサ様に御報告いたします。」
「良しなに頼みます。」
ボルトは袋を懐にしまい城を後にするのだった・・・
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