第213話 真実が・・・

「陛下、開戦の理由とは?

魔王軍がいきなり攻めてきたのではないのですか?」

話を聞いていた貴族達の中には開戦理由も知らず戦っている者も多くいる、理由があるとなると聞きたくなるのは当然の反応であった。


「開戦の理由はハーツの命を狙っての事だ、我が国としては敵国に王太子の命を差し出すような真似はできん。」

ヘリオスの言葉に頷く貴族もいるのだが、ボルトは呆れたような表情を見せていた。


「王太子ハーツが魔王国が崇拝する創造神の建築した神殿に主神を妾にすると彫り込んだのが開戦の理由であろう。

これは魔族側から聞いた話だが嘘は無いと我が国は判断している。」

ボルトの言葉にヘリオスの表情は青くなり、他の貴族は驚いた様子を見せていた。


「使者殿、それは流石に嘘であろう、何故ハーツ様が魔王国が崇拝する神殿に出向く事がある。」

「ドンナ男爵は黙りなさい。」

貴族の一人が話すが崇拝する理由を知る高位貴族ハクロ侯爵がドンナを制する。


「ハクロ侯爵、まさか神殿に向かう事があるのですか・・・」

「主神の神殿に参拝する事は王家の慣習にある。

それは王太子になった事の報告に出向く為であり、多くの供を連れて行ってはならないという決まり事から、王太子の身の安全を考え密かに行われているのだ。」

「そんな・・・いったい何が真実なのか。」

ドンナ男爵をはじめ発端になった慣習すら知らない下級貴族達はヘリオスへの不信感が生まれつつあった。


「静まれ!慣習を秘事としていた事は古くよりの取り決めなのだ、私としても話す訳にはいかなかったのだ。」

「陛下、ならばハーツ様の暴挙はまさか・・・」

「ハーツが軽率な行いをした事は・・・事実である。」

「なっ!主神の神殿に戯言を彫り込んだのですか!

それは魔王国に大義があるのでは・・・」

明かされる事実に貴族達に童謡が広がる。


「まて、私としても賠償と修繕を申し出た、だが魔王国は狭量であり、賠償も修繕も受け入れないと言って攻めてきたのだ!

魔王国は攻める理由を探していただけなのだろう!」

ヘリオスは動揺する貴族をなだめようとする。

多くの貴族が今回の戦争で領地を失い、現在ルデンに逃げ込んで不自由な暮らしをしている、その原因がハーツの暴挙が原因とわかれば納得出来ない者も多くいるだろう。


「魔王国はハーツの首を求めて戦を始めたと言っておりました、ゴウ様が話し合いの場に着いた時にはハーツの首で停戦しても良いとおっしゃっていました。」

「使者殿は口を挟まないでもらえるか。」

ヘリオスは苦々しくボルトを睨む。


「この事はクロエ王女もご存知の話です。

先程もおっしゃられたようにゴウ様の情けにより、ハーツの王族追放で矛を収めてもらえるようになりました。

これ以上の好条件は無いと思いますが?」

「他国に王族追放を決められる事などできん!」

「お父様!落ち着いてください、皆も見ております。王として毅然とした態度でお願いします。」

クロエはヘリオスをなだめる、これ以上の醜態をさらして自国の貴族の忠誠まで失うわけにはいかないのだ・・・

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