第209話 魔王国では

話し合いのあと、アクラは魔王国の各部族に使者を出していた。

「創造神様の御親族、剣神様の御親族が御姿をお見せになりました!!」

「なんと!それは本当か!」

「アクラ様は間違い無いとの事にございます。

近々、イーヨに来訪なされる御予定にございます。

この祝事に参加なされるならイーヨにお向かいください。」

「わかった、我等も至急イーヨに向かいお出迎えの準備を致す。」

急報としてもたらされた報告に各部族はそれぞれイーヨに向かい出迎える準備をすることになる、各部族は前代未聞の祝賀ムードとなっていくのであった。


「アクラよ、創造神様と剣神様の御親族が現れたのは本当なのか?」

アクラは魔王クーラと謁見し、事態を説明していた。

「はっ、剣神様の御親族ゴウ様は創造神様に似たチカラをお持ちになられたており、桐谷の姓を名乗っておられました。

それと創造神様の御親族ミユキ様は創造神様が一度お亡くなりになられた事をご存知の様子でした。」

桐谷の姓と創造神が一度人として死を迎えた事を知る者は多くない、少なくとも人族の伝承には残されておらず、魔族の各族長が口伝にて語り継いでいるほどの話なのだ、嘘をついているとは思われなかった。


「そうなのか!ならば出迎える準備を致さねばならん!」

「お待ちを、話はまだ少しございます。」

「なんだ?」

「はっ、ラニアン王国の王女がゴウ様に拾われておりまして、その者がゴウ様のお慈悲をいい事にゴミ太子の助命を願い出ておりました。」

「ぬっ・・・あのゴミの助命だと!」

「はっ、ゴウ様は寛大な御方の御様子で懐に入られた王女を斬り捨てる事が出来ぬ御様子にございました。

そこでゴミ太子の王族追放という形での停戦を提案なされました。」

「ゴミ太子を生かすのか・・・」

「クーラ様、どうかお考えください、ここでゴミを始末すればゴウ様の心が我等に傾かない可能性がございます。

あの御方は慈悲の心の厚い御方とお見受け致しました、どうか一考してもらえないでしょうか?」

「しかしだ、他の部族が納得するであろうか?」

「クーラ様、物は考えようにございます。

王太子と暮らしていた者が王族を追放されるのです、それはさぞ屈辱にございましょう。」

「たしかに王太子だった者が王族でも無くなるというのはさぞ屈辱であるな。」

「はい、そして仮にラニアン王国がゴミ太子を王族として援助でもすればそれを口実に首を狙えばよろしいかと。」

「たしかにその時は我等に非は無いな。」

「はっ、今は御二方の降臨という祝事にございます。

恩赦という形にて矛を収め、後日あらためて大義名分をもって攻めればよろしいかと。」

「わかった、各部族には私から説明するが、アクラよお主もイーヨに着いた者達に今の話を直接話すのだ。

御二方が来訪なされる前に説得を終わらせよ。」

「お任せください。」

クーラとアクラは各部族に説明して停戦と王太子の助命を認めさせる。

助命に対しては各部族ともに難色を示したものの、剣神様のお慈悲の心を蔑ろに出来ないと一応の決着を迎えるのであった。

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