第208話 クロエの質問

「アクラ殿にお聞きします、海を隔てておりますがジョージア王国と友好を結ぶ事は可能でしょうか?」

満足気なアクラに今度はアリサが質問する。


「私だけで決めれる事ではないが、クーラ様にお伺いをたてる事は可能だ。

まあ、ゴウ殿とミユキ様の口添えがあれば反対もなさらぬとは思う。」

「ミユキ・・・さんの口添えですね。」

アリサはここに来てミユキの存在が大きくなった事を感じる、これまで奴隷と思っていた者がゴウの正室候補まで上がってきたのだ、その心中は状況を飲み込む事で精一杯となっていた。


「ミユキさん、頼めるでしょうか?」

「ゴウさんのお考えから離れるつもりはありませんので、ゴウさんに決めてもらいます。」

「俺は友好関係になるのはいい事だと思っているよ。

アクラさん、クーラさんに口添えをお願いできませんか?」

「わかりました、ゴウ様がルデンのご用事を終えるまでにはクーラ様から返事をもらえるように働きかけましょう。」

「よろしくお願いします。」

アクラの答えを聞き、アリサは一先ずの目的が達しそうな手応えを感じ一安心する。


だが心中穏やかでない者が一人残されていた・・・

「アクラに聞きます、魔王軍はラニアン王国への攻撃を止めないというのですか?」

「王太子の首を差し出せ、攻撃を止めるかどうかはそこからの話だ。」

先程までの和やかな空気は一瞬で消える、ラニアン王国のクロエに対してはアクラも厳しい声をだす。


「アクラさん、もう少し条件を緩和できないだろうか?

この子の事を考えれば、この子の兄に死を求める事は酷く感じてしまう、命を救うぐらいはできないだろうか?」

「・・・ゴウ殿が言われるなら、ゴウ殿とミユキ様の来訪という祝事をかんがみ多少なりの恩赦を働きかけるぐらいなら。

ですが、最低限王太子の地位、いや王族からの追放ぐらいはしてもらわなければクーラ様をはじめ多くの者が納得しないと存じます。」

「そんな、それでは兄は死んだも同然に・・・」

「クロエさん、王族を止めたとしても死んではいませんよ。

私が介入するのはここまでです、それで納得できないのならラニアン王国としてなんとかしてください。」

「ゴウさんからもっと強く言っていただければ、まだ譲歩も引き出せるのでは?」

ゴウが少し話しただけでいとも簡単に譲歩が引き出せたのだ、もう少し交渉すればまだ譲歩を引き出せるように感じるのだが・・・


「魔王国の大事な物を傷つけたのです、その酬いは必要だと思いますし。

私の心情としては魔王国の方が理解できます。

クロエさんを助けた縁とはいえ、魔王国の縁を無視してまでラニアン王国王太子を助けたいとは思いません。」

俺の言葉をきき、クロエは表情をくもらせるのであった・・・

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