第205話 アクラと話し合い

「あらためて名乗ろう、私は鬼族を束ねるアクラだ。」

「私はゴウです。こちらは海を渡った国の王女アリサさんとこの国の王女クロエさんです。」

「アリサと申します、以後お見知りおきを。」

「クロエです。」

アリサとクロエは両者ともに多少震えているが毅然とした態度でのぞんでいた。


「二国の姫を侍らすか、中々の剛毅ですな。」

「侍らせている訳ではありません、魔王軍の侵攻にあたり、様々な縁によりこのような状況になっております。」

「我等の侵攻のせいと言うか?」

「はい、事情があることはお聞きしていますが、私の状況は貴方がたが引き起こしたと言っていいと思いますよ。」

「たしかにそうであるな、特にラニアン王国の王女などは本来王都にいるはずだろうからな。」

アクラは軽く笑うのだが・・・


「攻めてきておいてなんですか!

貴方がたが攻めてきた事によりどれだけの多くの国民が命を落としたと!」

クロエはアクラの態度に激昂する。


「我等を侮辱し、戦争に至ったのはラニアン王国王太子の振る舞いのはずだ、我等は王太子の首を差し出せば兵を退くと伝えたはずだが?」

「王太子の命を差し出す国がありますか!

私達は賠償金を差し出すと交渉したはずです!」

「賠償金?金で創造神様がお創りになられた壁が直るというのか!

我等は金で欲しさに軍を上げた訳では無い!

我等の誇りを穢した者を始末するまで引くことは無い!」

「アクラさん落ち着いてください、こちらはか弱い女性ですよ、声を荒げては話になりません。」

「失礼した、だが我等としてはそれほどまでに大事な物を傷つけられたのだ。」

アクラは真摯に謝罪してくる、その様子を見る限り、余程大事な物を傷つけられたということが良く伝わってくる。


「一つお聞きしたいのですが、何故王太子は魔王国がそれほどまでに大事にしている神殿に入れたのですか?」

「それはラニアン王国の王位を継ぐ者は主神の像に忠誠を誓う習わしがあるのです。

その為、聖地キチは本来両族が入る事を許されている町なのですが・・・

ラニアン王国の王族が自ら膝を着くことを隠す為にいつしか自国の人族が聖地キチに向かう事を禁じ、今や王族、それも王位を継ぐ者が挨拶に来るだけになったのです。」

「それはそれで失礼な話だね。」

「はい、それだけでも許しがたいと考えておりますが・・・」

「嘘です、そんな話は聞いておりません、聖地キチは王家に取って特別な場所であり、町には同行する騎士すら入る事が許されない神聖な場所と聞き及んでいます、魔王国の者がいるなんて嘘です!」

クロエは否定するものの、俺はアクラが嘘をついているようには見えない。


「アクラさん、もし私が聖地キチに向かいたいといえば行ってもいいんですか?」

「かまいません、ただ現在戦争の影響で少々気が立っている者もおりますので向かうならこちらから供をお付けしましょう。」

「その時はよろしくお願いします。」

「そんな・・・」

アクラの言葉にクロエは自身がこれまで知る事が嘘なのかも知れないと不安になるのであった。

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