第200話 その夜
「失敗しました、つい楽しみすぎてゴウ様との距離を近づける事が出来ませんでした。」
アリサとクロエ両者ともに見たこともない華やかな乗り物に心を奪われ、案内されるまま堪能していた。
ゴウは気にもしていないのだが、男女の仲を進めるには二人揃って大失態である。
しかもホテルに入ってからもその設備の物珍しさに目を奪われる、調度品こそ王宮に及ばないもののその機能性には驚くものがあった、そして、美味しい食事にデザート、用意されている美容品に心身ともに最高の時を過ごしていたのだ。
だが、それこそ失敗なのである、気がつくとかなり遅い時間となっており、訪問するには少々問題な時間である。
王女として流石に夜這いのような真似は出来ない、せめてもう少し早い時間に部屋を訪ね、なし崩しになら・・・
「デイジー、ゴウ様の所に向かうのは流石に遅い時間ですよね?」
「はい、もうお休みになられていらっしゃるのでは無いでしょうか?」
「・・・失敗しました、あまりにこの美容品の素晴らしさに心を奪われてしまい。
・・・デイジー、クロエ王女はゴウ様の所に向かっていませんよね?」
「それは大丈夫かと、騎士達が護衛の名目で部屋を見張っております、クロエ王女が動かれれば少なくとも連絡の一つは入るはずです。」
「それならまずは一安心です。
はぁ、仲の進展は明日以降に持ち越しということになりますね・・・」
アリサは少し残念そうに就寝するのだった・・・
「ルートさんも飲める口ですね。」
「ゴウ様、このような高級な酒を頂きよろしいのですか?」
俺はルートを誘い、ホテルのBARに来ていた。
俺の周りには未成年が多いため安易に飲む訳にもいかないのだが、前回の旅で人となりを知ったルート相手なら一緒に飲むのも楽しいんだろうと誘ったのだ。
「遠慮無く飲んでください、ここはルートさんの領地ですし、なんの遠慮も必要無いでしょう。」
「いやいや、此処はゴウ様のお作りになられた場所ではないですか?」
「細かい事を気にしてたら酒の味がわからなくなりますよ〜」
「そうかも知れませんがこれほど美味しい酒は知りませんよ。」
「これは俺の世界で中々飲むことの出来ないワインなんです、俺も飲むのは初めてなんですけどこれほど味わい深いとは思いませんでした。」
「これほどの美味しさなら理解できますが、私なんかが飲んでも良いものなのでしょうか?」
「せっかく有るからね、飲まないと勿体ないよ。
それに今後此処は開放するつもりですから、領主のルートさんならいつでも飲みに来れますよ。」
「ここを開放するのですか!」
「そうですよ、電車を使って此処に来て遊んで泊まって帰る、新たな楽しみを生み出したつもりです。」
「新たな楽しみと申されましても、この酒だけでもくる価値はいくらでもありますね。」
「俺もそう思いますよ、ただ値段もやばいですから、人それぞれ身の丈にあったお酒を楽しんでもらいたいものです」
俺は酒を味わい、ルートと楽しく飲むのだった・・・
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