第182話 混乱のポメ

ゴウが出ていって数日、ポメの町では再び食料を巡り混乱が起きていた。

「なぁ食料を売ってくれよ!」

「もう無いんです!」

「嘘を言うなよ、この前まで幾らでも仕入れる事ができるって言ってたじゃねえか!」

「仕入先が無くなったんです、私達にどうにか出来る事は無いんです。」

「なら仕入れてこいよ!」

各商人の店に住民が押しかけ同じような光景が見られていた。


「マッサ!どうなっているんだ!あの店は何処に行った!」

「ヨクボさん!あなたがゴウさんを訴えたりするからおかしな事になったんです、当事者として責任を取るべきだ!」

「なんの話だ、私は被害にあった親族の気持ちに寄り添っただけだ、そもそも訴える権利は住民達が所有する権利だ、マッサは権利を侵害するのか!」

「話をすり替えないでください!

他国の者であるゴウさんから店の権利を奪う為に難癖をつけようとすれば、ゴウさんだっていなくなっても仕方無いでしょ!

今の食料難は全てヨクボさんのせいじゃないか!」

「貴様、この町で私に逆らって店をやれると思うなよ!」

「店をやるも何も何も売るものが無いんだ、どうとでもしてみろよ!」

マッサも既に開き直っていた、マッサの店も多くの人が押し寄せて来ているが既に売るものなど無い、先日まで積み上げた名声など既に地に落ちている、この町で再び店を開けるとは思えなかった・・・


「ハーツ殿下、町が混乱しておりますがどう致しましょう?」

「放おっておけ、どうにもなるまい。

それより、橋頭堡はどうなったのだ、あの場所から側面を突けば魔王軍の殲滅も狙えたはずでは無かったのか!」

「ハーツ殿下、既に無い物を頼ろうとするのはおやめください。」

「何を言っている!一度は合ったのだ、再び作る事は可能であろう、なんとかするのだ!」

側近達は顔を見合わせる、あの橋頭堡は敵からの攻撃をまったく受け付けない事に価値が合ったのだ、だがそんな物を作れるなら今のような戦況になってなどいない、失ってからわかる、あれは絶対に失ってはいけなかったのだと・・・


「ハーツ殿下、あの施設はゴウから借り受けていた施設であり、ゴウはあの施設を作るチカラがございました。

ですが、そのゴウは既にジョージア王国に帰国したものと考えられます。」

「ならばジョージア王国に向かい連れてくれば良かろう!」

「殿下、海を渡る事は簡単な事ではありません、十全に準備を行っても失敗する可能性が高いのです。」

「くそっ!面白くないわ!!」

ハーツは苛立ちをつのらせていた、先日まで見えていた光明が無くなったのである、その怒りは尋常ではなかった。


「おい、ゴウとやらを訴えた商人がいるんだったな。」

「はい、ヨクボという商人が訴えたそうです。」

「その者を捕らえよ。」

「えっ?」

「この苦難を招いたのは全てその商人の罪である、その者を処刑する事で住民の不満のはけ口にするとともに、ゴウとやらが次に来たときに溜飲を下げる事にもなろう。」

「たしかに・・・」

「ならば早くしろ!公開処刑として住民にも罪がよくわかるように報せるのだ!

その商人の浅はかな真似で今国難になっているのだと知らしめるのだ!」

ハーツの命令でヨクボは一族のみならず、店に勤める者達も全員が捕縛されるのであった・・・

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