第175話 温泉旅館

「しかし、つくづく日本の温泉旅館だね。」

俺は一風呂浴びたあと部屋でのんびりしているのだが、温泉は檜風呂に露天風呂、サウナまで完備されてあり、外の景色を除けば日本にいると勘違いしてしまいそうな程、日本にそっくりであった。


「ここは創造神様をはじめ、多くの神々が来訪された由緒ある旅館です、その方々に少しでもゆっくりしてもらうように日本式の温泉旅館を建築したとの事です。」

サンキがお茶と温泉饅頭の用意をしてくれながら答えてくれる。

「そんな由緒ある旅館に泊まって良かったのかな?」

「かまいません、ここは旅館として多くの方々が泊まっております。

勿論神々がお使いになられた部屋は今も誰も泊めずにそのままとしております。」

「へぇ、神様がお使いになられた部屋か、きっと神々しい部屋なんだろうね。」

「ご覧になられますか?」

「見ることができるの?」

「ええ、この旅館の観光名所となっております、中には神々がお忘れになられた私物などもございまして、神々の生活を僅かながら見ることが出来ます。」

「神様の忘れ物か、それは面白そうだ、何処に行けば見れるかな?」

「滞在された部屋に一緒に展示してあります。」

「じゃあ行ってみようかな。」

「ご案内致します。」


俺はサンキに案内され神々が滞在されたという部屋を見に行く・・・のだが・・・


「あれ?何処かで見たような・・・」

俺は目を擦り、もう一度見直すがその物が無くなる事は無い。

そこにあったのは携帯電話であった。


「これは創造神様の友であり剣神リョウ様の私物と言われております。

忘れた経緯については厳しい修行を急遽行う事になり置き忘れたと伝わっております。

信義はともかく神々にも人間性がある話として多くの人に慕われる逸話ですね。」

「これって千年前の物にしては良く残ってますね。」

「それについては劣化防止の魔法がかけられてあります、お忘れになられた時よりいつか取りに戻られる物としてずっと管理しております。」

「これって中のデータは入っているんですか?」

「中のデータ?」

「はい、電源を入れたりは?」

「電源?いえ恐れ多く維持管理以外は行っておりません。」

「電源を入れてみても?」

「おやめください!これは神代から伝わる貴重な物!決して触らないようにしてください!」

サンキは慌てて止める。


「そ、そうですよね、触る訳にはいきませんね。ただこれに似た物を知ってまして、それには中に写真という肖像画のような物もあります。

もし電源が入れば神々の肖像が残されているかも知れないと思ったのです。」

「・・・たしかに地球の方ならこの神宝が何かは存じているのかも知れませんが、それでもご容赦願います。」

「勿論、無理に触ったり試したりはしないよ。」

俺は少し残念に思いながらもその場をあとにするのだった。

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