第172話 その頃のクロエは

クロエは城に滞在している間にジョージア王国貴族と積極的に交流し、ラニアン王国に援軍を派遣してくれるように働きかけていた。


「クロエ様、本日はマウンテン伯爵との会談が予定されております。」

「マウンテン伯爵は軍務に影響力のある方です、ラニアン王国の苦境を理解してもらえれば必ずチカラになってもらえます。」

「クロエ様、ですがあまり男性と会談ばかり行うと、その良からぬ噂にならないかと・・・」

「ローズ、今はそのような事を言っている場合ではありません、たとえ私がどのように言われたとしても一兵でも多くラニアン王国に送るために行動する時なのです。」

クロエは数多くの貴族と交流する為、色仕掛けをしているのでは無いかと、心無い悪評が出ている事も理解している、ローズは主人であるクロエの悪評に怒るところもあるのだが、クロエは国難の時だからこそ自身の悪評など関係無く精力的に活動していた。


「ローズ、ゴウさんはまだお戻りになっていませんか?」

「ゴウですか?調査団とともにラニアン王国に向かったと聞きましたが、まだ戻って来たとの報せはありません。」

「そうですか・・・

ローズ、ゴウさんの事は様をつけて呼ぶようにしなさい。」

「様をつけてですか?相手は平民ですが?」

「ゴウさんはジョージア王国で国賓として迎え入れられているだけではありません、ラニアン王国に向かう為にもゴウさんの協力が必要です。

ローズ、絶対に失礼な真似をしてはいけません、あの方は誠意を持って付き合えば無碍にするような方ではありません。

今してはならない事はあの方の友誼を失う事です。

よく理解しておきなさい。」

「申し訳ありません。」

「それに、ジョージア王国ではゴウ様の存在も大きいようです、実際何も持たない私が身体を要求されること無く皆さんに相手をされているのもゴウさんの推挙があったからです。

あの方は古の魔法使いとしてこの国の建国秘話に登場する偉大な方と目されているのです、絶対に失礼な真似をしてはなりません。

できる事なら私がお側に控える事が出来れば心強いのですが・・・」

クロエは自身の身を預けるならゴウが一番有力候補と考えていたがそれをするにはゴウとの距離を詰めなければならない、調査団と一緒に向かうべきだったかも知れないと考える。


「クロエ様!早まった真似はどうかお止めください、クロエ様の身を犠牲にする必要はありません。」

「犠牲というほど嫌いという訳でも無いのですけど。」

「お止めください、せめて陛下の御命令があるまで早まった真似だけはご容赦を!」

顔面蒼白になりながらローズは止めてくる、実際国王の許可なく嫁いだとあれば騎士であるローズの罰は免れないだろう。

「わかってます、私も王女としての立場は理解しております。

ですが、それも含めて考えても・・・」

「クロエさま!!」

ローズの悲痛な声が響くのであった。

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