第166話 英雄プレザ

「町を救いに行くぞ!」

プレザは町から火の手が上がるのを見て町の中に敵が侵入したことに気付く、だからこそ部隊を率いて町に向かおうとするのだが・・・

「お待ちくださいプレザ隊長、殿下の御命令は此処からの攻撃です、貴方は作戦を放棄するのですか?」

「黙れイース、住民が魔族に攻められているのだ、助ける必要がある。

幸い、此処は攻撃を受けることは無い、弓兵と魔術兵は此処から攻撃を放ち牽制すればいい。

近接部隊はすぐに船に乗れ。」

「プレザ隊長、それは命令違反です。」

「これは部隊を率いる私の命令だ、そんなに来たくないならイースは此処に残り指揮を取れ、他の者はさっさと船に乗れ、従わないならそれこそ命令違反で殿下に直接罰を下してもらうぞ!」

プレザの言葉にイースは反論できない、そもそも人事を無視して部隊の隊長になる程、ハーツ王太子に近いプレザなのだ、これ以上の反発はイースも身の危険を感じる。


「・・・わかりました、全員プレザ隊長の命令に従え。」

イースの命令に部隊は分かれ船にプレザ達は乗る。

「イースここは任せた。」

「はい。」

イースはそれ以上逆らう事無く、プレザを見送るのであった。


船着き場に着いたプレザが見たのは無惨に殺された婦人の姿であった。

そして、魔族は道の駅に群がっているように見える。

「全員、魔族に向かい突撃だ!

奇襲の勢いのまま殲滅せよ!」

プレザも剣を抜き、道の駅に気を取られる魔族を後ろから強襲する。

「討ち取れ!逃すな!」

強襲を受けた魔族はひとたまりもなくプレザ達に討ち取られる。

その姿を見た者たちは救世主が現れたと祈る者までいた。


「・・・あのお名前は?」

「私ですか?私はプレザ、殿下から兵を預かり、皆さんを救いに来ました。」

「プレザ様、ありがとうございます。」

「英雄プレザ、万歳!!」

「これで俺達は助かるぞ!」

住民達は口々にプレザを褒め称える。


「これも全て殿下の思し召しです、私はまだ町に侵入した魔族を討たなくてはなりません、皆さんは今暫しここでお待ちください。」

「はい!よろしくお願いします、町を救ってください!」

住民達の期待を集めて、プレザは町へ繰り出す、幸い侵入した魔族の数は多く無いうえ散らばっている為、一人ずつプレザの部隊に討ち取られていく、その姿は逃げ惑っていた者達からも救世主に見えていたのだ。


そんな中、一人の勇敢な男が魔族と戦おうとしている姿を見つける、冒険者らしいその男は魔族が蔓延る中、勇敢にも一人で戦っていたのだろうか。

だがプレザ達が駆けつける前に男の剣が躱され腕を斬られる。


「まずい!」

魔族がとどめをさそうと剣を振り上げた隙に駆けつけたプレザは魔族の首を刎ねる。


「大丈夫では無いな、誰か止血を!」

「あ、あ!う、うでが・・・うでが・・・」

男は錯乱しているのか自分の腕を眺めながらつぶやいている。

「誰か避難所までこの勇敢な者を運んでくれ。」 プレザは兵に命じて男を安全な場所へと送るように伝えるのであった。

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