第164話 港の混乱
魔族が港に姿をみせる、このことにまだ避難出来ていない者達は逃げ惑う事になる。
「おい、早く乗れよ!」
「でも、船に乗るなんて初めてで・・・」
「怖いなら後ろで待ってろよ!もう魔族が来てるんだよ!」
水上バスに乗ろうとするが昇降口で足がすくみ身動きが取れない婦人のせいで乗れない者達がいたのだが、魔族が現れた事で悠長に待っていることが出来なくなる。
婦人を後ろから押すのだがそれが恐怖を増したのか手摺を持ちながら座り込んでしまう。
「止めて!止めてください!」
「お前こそ座り込むなよ!さっさと乗れ!」
「いや!無理です!」
頑なに手摺を持ち渡ろうとしなくなる。
「もういい!」
後ろにいた者は婦人を飛び越え船に乗り込んで行く。
そして定員をむかえた水上バスは出発する。
その際昇降口で止まっていた女性は港に降ろされてしまう。
「えっ、待って!私も乗る・・・」
港に座り込んだ状態の婦人は立ち上がり乗ろうとするのだがまだ残っている人達に押される。
「お前は乗れないんだったら他に逃げろよ!これ以上は付き合ってられない!」
次の水上バスにすら乗れなくなる。
婦人以外の全員が乗り込んだ所で婦人は再び昇降口で座り込んでいた。
「お前はなんの嫌がらせだ!乗らないならさっさと別の所にいけよ!」
「別の所なんて何処にあるのよ、港の避難所にはもう魔族が来てるのよ!」
婦人の言葉のとおり魔族は避難所を襲っているように見える、今更避難所に逃げ込むなんて出来ない、水上バスに乗るしか道が無いのにそれでも船に乗るのは怖いのだ。
「おい、こいつを引っ張り込め!」
話し合いで解決しない為、力強くで引きずり込む事になる、さっきと同じように手摺を掴んでいるのだがその手を無理矢理引き剥がし数人がかりで中へと引っ張り込むのだった。
「止めて!いたい!いたい!乱暴にしないで!」
「うるせぇ!死にたいなら港に放り出すぞ!」
婦人は半狂乱になりながらも男達に取り押さえられていた。
「あんた落ち着けよ、もう乗ったんだ、あとは避難するだけじゃないか。」
「やめてよ!離してよ!私に触らないで!」
「暴れないなら、離す。
落ち着いて話そう。」
「暴れないから離しなさいよ!」
男達は多少なり落ち着いた様子に婦人を離すのだが・・・
「この変態!私を無理矢理押し倒すなんて絶対に許さないから!」
婦人は怒りのまま男の一人を引っ叩くのだが・・・
暴力禁止の船である、婦人は港に強制転移される。
「・・・ああ、暴力禁止ってこういう事か。」
叩かれた男を含め、暴れていた婦人に同情する者はいなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます