第160話 戦闘は芳しくない
俺の所に住民が逃げ込んでいた時、城壁は危険な状態となっていた。
「ワンスキー様!第三階段に敵が迫っております。」
「階段を降りさせてはならん!こちらから三百の兵を連れて行け!」
「ワンスキー様、それだと此処が手薄になってしまいます!」
「ここは私がいる、三百がいなくともなんとかして見せる!
おい、近衛兵どもはまだ来ないのか!」
「まだ、来ておりません!」
「くそっ!籠城中に深酒をするなど言語道断!何を考えているのだ!」
「ワンスキー様!弟君のハスキー様が討ち死になされました。」
「なんだと!ハスキーめ、先を急ぎおって・・・
ハスキーの持ち場はどうなっている!」
「現在ハスキー様の御子息サモエド様が指揮をとって何とか防戦しております。」
「誰か手の空いている指揮官はいないのか?」
「近衛兵が動かない限り、手の空いている者はおりません!」
「くそっ!全軍に今暫し耐えるように伝えろ!近衛兵達も城壁を越えられる意味はわかっているはずだ、必ずや援軍に来る!それまでの辛抱だ!」
ワンスキーは多大な被害を出しながらも必死に城壁を守っていた。
だがついに・・・
「第二階段突破されました、敵が町に入ってしまいます!」
「な、なんだと!何処かに兵はおらぬか!」
「お、おりませぬ・・・」
既に予備兵も使い果たしていた、ワンスキーの魔族達が町に雪崩込み住民達に被害が出ることになってしまう・・・
ワンスキーは悔しさに拳を強く握る。
「皆、落ち着け!これ以上向かわせる訳にはいかない、至急第二階段を取り返せ!
町には冒険者も多くいる、魔族が多少入ったとて蹂躙される訳では無い、我等はこれ以上の侵入を防ぐのだ!」
ワンスキーは悔しくも出来る事をするしか無い、町にいる冒険者達に期待するしか無いのだった。
「魔族だ!魔族が来たぞ!!」
城壁を降りてきた魔族に住民達の混乱は増していく。
「くそっ!ただでやられたりするか!」
冒険者の中には勇ましく戦う事を選ぶ者もいるのだが、住民達が逃げ惑う中、仲間と連携する事もままならない状態に苦戦するのであった。
「魔族が魔族が来てるんだ!中に入れてくれ!」
城に詰めかけた者達は中に入れてもらおうと懇願するのだがその重い門が開くことはない。
「これからもハーツ殿下が出陣なさるのだ、そこにいると軍が出ることがままならない速やかに退くように。」
「魔族が来ているんだ!頼む、入れてくれ!」
「今受け入れをすると軍が出れなくなる、教会に避難するように。」
兵士は冷たく住民達を追い返していた。
だが教会も既に収容一杯であり、これ以上は中に入ることが叶わなかった・・・
「いったい何処に逃げればいいんだよ!」
悲鳴に似た叫びが上がる。
「おい、港の方に避難出来る場所があるみたいだぞ。」
「そうなのか?」
「既に多くの奴等が避難してるって聞いた、まだ間に合うかも知れない。」
「よし、港へ急げ!」
噂を信じて多くの者達が港に集まって来るのであった。
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