第157話 敵襲

宴が終わり夜も更けていた頃・・・

「敵襲!!敵が城壁の上に!!」

闇夜に紛れて敵が城壁を登って来ていたのだ。


本来その場を指揮すべき将は宴に参加し、酔い潰れていた為に防戦ままならない状態であった。


「防げ!まだ僅かな数が城壁の上に登っただけだ、今ならまだ押し勝てるはずだ!」

ワンスキーは騒ぎを聞きつけ直ぐ様指揮を取るのだが、将のいない各所では士気も上がらず、統率も乱れ防戦が後手後手となっていた。


「ハーツ様!一大事にございます!」

「なんだ、夜中に騒がしい・・・」

「敵が奇襲をかけてきました!すぐに鎧を纏い戦に備えてください!」

「なんだと!!ワンスキーは何をしている!」

「ワンスキー様は現在防戦しておりますが、将の不在が城壁の各所で相次ぎ、兵の指揮を取れず苦戦は免れない状況にございます。」

「何をしている!城壁を越えられる訳にはいかないのだぞ!」

「最善を尽くしておりますが・・・」

ワンスキー麾下であり、この町出身の兵士達は宴に浮かれる事なく防衛に努めていたのだが、ハーツが連れてきた王都からの兵が宴に浮かれ、上官のいない事をいいことに飲酒をしてしまっており、当初の防衛が出来ていない。

そもそも見張りを怠り、城壁に張り付かれるまで気付かなかったのもハーツの麾下の兵なのだ、報告に来たワンスキー麾下の兵はハーツの叱責に苦々しい思いをしていた。


「くそっ!使えぬ奴らめ、近衛兵を出せ、ワンスキーが城を守れぬというなら私が守ろうではないか。

誰か鎧を持て!」

ハーツは酒の勢いもあり、勇ましく叫ぶ。

「すぐに御用意致します。」

侍女は慌てて鎧の準備をするのであった。


「敵か、全員戦闘準備をしろ!」

ルートは城の騒ぎを聞き、帯同していた全員に戦う準備をさせる。

「誰か城の者を呼んで来てくれ、まずは状況を確認したい。」

「ただちに!」

ルートは自身も戦闘準備しつつ、確認を取るのも忘れない。


「ルート子爵、大丈夫ですので部屋で待機を・・・」

「そんな状況でない事は窓から見える景色でわかるだろう、早く城壁を確保するしか無い。」

「現在、ハーツ王太子殿下の指揮のもとに立て直しを行っております。

ルート子爵は安心してお休みください。」

「・・・我等は遊びに来ている訳では無い、現在の戦況を見ることも調査の一つだ、少なくとも町の状況は先に見させてもらう。」

「・・・わかりました、城壁への許可は出ていませんが町の中なら大丈夫でしょう。

案内役をご用意しますのでその者と一緒に調査してください。」

「わかりました、すぐに向かいたいのですが同行者はいつ来ますか?」

「すぐに連れてまいりますのでお待ちください。」

「ならば、あとから来られるといいでしょう。

我々は港の方に向かいますので。」

ルートは時間を稼ごうとする兵を軽くいなし、街へ向かうのであった。

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