第152話 報告

「ゴウさんは何か言っていなかったか?」

「えーと、ですね、たしかに・・・一度帰るとかなんとか言ってたと思いますね。」


「一度帰るか、それならもう一度来ることもあると言うことだよな。」

「そういう風に聞けますよね。」

プレザとマッサは残された言葉に少しだけ安堵するのだが、自分達がゴウを軽んじているように思われていないか不安を覚える。


「ノロ、ゴウさんはこの町の恩人だ、彼が訪ねて来たら何をおいてでも私に連絡するように。」

「わかりました。」

「私も連絡体制を作りたいところですが、部隊を纏めれていない、マッサさんに期待させてもらってもいいでしょうか?」

「プレザも大変なのですね、わかりました。

ゴウさんの船が来たら私の方から接触してみます。」

「よろしくお願いします。

私はハーツ殿下に報告に上がりますのでこれで失礼させてもらいます。」

プレザはハーツのもとへと向かう・・・


「プレザよく来たな、プレザの戦果はここからでもよく見えているぞ。」

「勿体無いお言葉にございます。」

「して、あの者に馬を輸送するように伝えたか?」

「それがゴウは不在にございました。」

「不在だと!この国家の危機というのに何を考えているのだ!」

「ハーツ殿下、あの者はジョージア王国の者にございます、我が国の事情ばかり押し付ける事は叶わぬかと。」

「プレザ、今は非常時である、他国の者といえど全面協力する必要があるだろう。」

「ゴウの協力のお陰で民への食料供給も行われているようです、彼は我々にかなりの協力をしてくれています。

どうか礼を持って対応してくれるように願います。」

「私はそれなりの礼をしているつもりだ。 しかし、民への食料供給が・・・

ロンド知っているか?」

「はい、商人達が何処からか食料を手に入れ安く販売しているようにございます。」

「そうか、それは良い、プレザの功績が一つ増えたな。」

「ハーツ殿下、私の功績とは?」

「なに、お前が連れてきた者によってもたらされたのだ、お前の功績にしても何も問題は無い。

ロンド、民達に広く知れ渡るようにしておけ。」

「かしこまりました。」

「ハーツ殿下、私の功績とするのはお止めください、どうかゴウの名を出し彼の功績にすることをお考えください。」

「他国の者に食料を恵まれたとあらばいい気のしない者もいるだろう、それならば市井に降りても国を憂う貴族としての、お前の名の方が民達も受け入れやすいであろう。」

「しかし、恩を仇で返すような真似は・・・」

「これは国の一大事なのだ、民の心を一つに纏め、魔族共に立ち向かわなければならない。

民達は今英雄を欲しているのだ、プレザよ、お前が英雄として国を救うのだ。

いいな。」

ハーツはプレザの肩をがっしり掴み強く言う。


「殿下・・・

わかりました、プレザ殿下の剣となり働かせていただきます。

ですが、どうかゴウに対する扱いだけは改善を願います。」

「わかった、善処しよう。」

一応のハーツの了承を得たことにプレザは胸をなでおろすとともにゴウへの罪悪感に苛まれることになるのであった。

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