第151話 ゴウのいない町
ゴウが一時帰国したポメではプレザの部隊が戦果を上げている事を喜ぶハーツがいた。
「これは良いではないか、流石プレザだ、見よ一方的な戦果であろう!」
「見事な物にございます。」
「だろう!これでプレザは英雄として名を馳せる事になるであろう。」
ハーツは自身の思惑通りに事が進み上機嫌であった。
「おい、騎兵隊を送る手筈はどうなっている?」
「現在進めておりますが、現在人を送る船に馬を載せる事が出来ずに難儀をしていると聞き及んでおります。」
「ならば他の船で送れば良いではないか!」
「距離は近いですが馬を船に載せて移動するのは危険です。」
「危険だと?」
「はい、海の魔物からすれば木の上に大量の餌が浮いているような状態になり、普段近海にいない魔物が寄ってくる事になるかも知れません。」
「しかし、それでは騎兵による作戦が出来ぬではないか!」
「ハーツ王太子殿下、ここはあの施設を作った者に運ばせるのが得策かと存じます。」
「わかった、あの者を呼べ。」
ハーツは使者を送りすぐに来るように伝えようとするのだが・・・
「ハーツ王太子殿下、施設を作った者がいる建物に入る事ができません。」
「なんだと!」
「あの建物に引き籠もっているのでしょうか。」
「私からの使者を無視するとは無礼な奴め、連絡を取れる者はおらぬのか?」
「プレザ殿なら連絡の術があるのでは無いですか?」
「ふむ、たしかにプレザはあの者を従えておるのだったな、忙しい所に追加で命じて申し訳無いがプレザに使者として向かうように伝えてくれ。」
ハーツからの命令はすぐにプレザまで届けられる。
それはゴウのもとに向かおうとしていたプレザにすると丁度いい命令であった。
「あの者に命じて馬の輸送を手伝わせろか、ハーツ殿下はゴウを軽んじておられるのか・・・
いや、それより命令が出たのだ、私はゴウに頼みに行くとするか・・・」
プレザはゴウの住むホテルまでやって来るのだが・・・
「ゴウさん、何処にいるのですか!
ゴウさん!!」
ホテルからは誰も出てこない、ダメ元で受付にいる巨大なタヌキに尋ねてみると現在宿泊者はいないと告げられる。
「宿泊者がいない、まさかあの船でゴウは帰国したのか。」
プレザは冷や汗が流れる、現状自分の部隊が施設を勝手に占拠し、使っている事に腹を立てたのではないか。
そもそも他国の者であるゴウに対してなんの報酬も示さずに施設を借り受けているのである、それだけでも腹を立てても仕方無いかも知れない。
プレザはこの事を報告しようと一度ポメに戻るのだが・・・
「なんだ、やけに商店に人が集まっているな。」
久しぶりに戻った町には活気があり、食料品を取扱う店では人が押しかけているのだ。
「マッサさん、繁盛してますね。」
プレザはたまたま見かけたマッサに声をかける。
「ええ、ゴウさんが大量に食料品を卸してくれてますのでどの店も大繁盛ですよ。」
「住民の食料まで助けてくれているのか。」
「ええ、あの人は神が遣わしてくれた救いの主かも知れませんね。」
「たしかに・・・
だが、ゴウさんはホテルにいない様子だったのだが、マッサさんは何か知らないか?」
「ゴウさんがいない?私は何も聞いておりませんが。」
「私も聞いていない、ただ一度私を訪ねて来てくれたそうなのだが、軍事行動中ということもあり、会うことができなかったのです。」
マッサとプレザが頭を悩ませていると・・・
「店長、今ゴウって言いました?」
店員の一人が声をかけてくる。
「なんだノロ、今はお前の相手をしている時じゃ無いんだ。」
「いえ、先日店長を訪ねて来た奴の名前がそんなやつだった気がしたんです。」
「なっ!なんで私に取次がない!」
「そいつ面会の予定を入れてないって言うんです、そんな奴たくさん来てますからね、店長も重要な奴以外は取次がなくて良いって言ったじゃ無いですか。」
ノロの言葉にマッサは表情を引きつらすのであった・・・
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