第141話 面会の後で
ハーツはクロエの無事を聞き、涙を流すほど喜んでいたのだが、涙を国民に見せることは良くないと、側近に連れられ城へと帰っていった。
「ゴウさん、先程はハーツ王太子殿下が失礼した。」
プレザはハーツがクロエの無事を伝えた時に俺を叱責した事について謝罪してきた。
「妹さんの無事を聞き気が急いていたのでしょう、致し方無いことかと。」
「それでも部下でも国民でも無いゴウさんにあのような態度は・・・」
「プレザさんが気にする事ではありません。
そうだ、お伝え出来なかったことがもう一つあるので後で伝えてもらうことはできませんか?」
「なんでしょうか?」
「マッサさんの協力により、町に店を出しました、私のチカラで食料品を販売することが出来ますのでこの町の食糧事情の改善になるかと。」
「なっ!そのような事をしてくれていたのですね。
必ずやハーツ王太子殿下にお伝えしておきます。」
「お願いします。」
「さて、それではハボを連れて攻撃の検証を行いたいのですが、この後よろしいでしょうか?」
「ええ、プレザさんこそこのまま行っていいのですか?」
「ええ、ハーツ王太子殿下の手を煩わせない為にも先程の食料品店の事とふまえて攻撃の件も纏めてお伝えしようと思います。」
「わかりました、それでは向かいましょうか。」
少し離れた所にいたハボを呼び出発する。
「プレザ、ハーツ様との面会は成功したのか?」
「成功したと言えるのか・・・」
プレザは心配であった、ゴウは見る限り気にしている様子は見えないがハーツ王太子がゴウに取った態度は最初こそ気にしている様子ではあったが、クロエの事や今回の攻撃に対してゴウに敬意を払っていない様子が見受けられた。
そもそも王族でも無いゴウが何故クロエと面識があり、状況を知っているのか、気にすべき点は数多くあるのにハーツが気にしている様子は無かったのだ。
「おいおい、ハーツ様にゴウさんの事はしっかり伝えたのだろ?」
「私なりには伝えたつもりだが・・・」
プレザは国を思い、友の為にも最善を尽くしたつもりであった・・・
「ハーツ様、落ち着かれましたか?」
「ああ・・・」
城に戻ったハーツは心を落ち着かせていた。
感極まり涙を流すなどこれまでした事は無かったが、クロエの無事を聞き思わず出てしまったのだ。
「まったくあの平民もクロエ様の動向を知っているならプレザを通して先に伝えておくべきであろう。」
長年側近を務めるロンドはゴウの配慮の無さに怒りを顕にする。
「ロンド、そう言ってやるな、平民が礼節を知らぬなどよくあること、不敬ではあるが寛大な心で見逃してやるのが王太子としての慈悲であろう。」
「さすがはハーツ様にございます、あの平民もハーツ様の寛大なお心に感謝する事でしょう。」
「うむ・・・
さて、あの場所から攻撃が可能であり、クロエが援軍を連れてきたと仮定して、戦略を立てる必要があるな。」
「はっ、あの場所から攻撃する事で敵の攻勢が弱まる事は間違い無いでしょう。」
「そうだな、あの場所に入れば攻撃を受けないのなら騎兵を入れ、拠点として攻撃を繰り返す事も可能であるな。」
「籠城で出番の無かった騎兵隊の者達も喜ぶ事にございましょう。」
「うむ、私としてはプレザに作戦の指揮を与えようと思う。」
「プレザにですか?」
「そうだ、五男の立場であるが故に家督を継ぐことが出来なかったが、この国難の時に活躍すれば英雄として爵位を得ても問題あるまい。」
「たしかに魔王軍に一矢報いる事になる今回の作戦の指揮を取れば爵位を得ても文句はでますまい。」
「そうであろう、そして今回の作戦の切っ掛けもプレザの手柄であるからな、その事を広く知らしめればプレザが私の下に来ても誰も文句を言う事はないだろう。」
以前、プレザを側近にしようとした時、プレザの五男という立場が邪魔をして、側近に出来なかったのだが、今回は違う、勝利の立役者ともなれば英雄として側近に迎え入れる事も可能であり、ゆくゆくは可愛い妹の相手としても迎える事も出来るのでは無いかと期待を持っていた。
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