第139話 店舗

「ゴウさん、何をしたんですか?」

「マッサさんの用意してくれた土地に食料品を取り扱う店を作りました。

これから一緒に見に行きましょう。」

「はぁ・・・」

作ったと言われても半信半疑なマッサとともに道の駅に向かう。


「うん、見慣れた場所だ。」

俺が今回作った道の駅には農産物の直売所とパン工房のある物だ、1日の販売数には限りがあるが毎日補充されるようなので町の食糧難には一役買うことだろう。


「ゴ、ゴウさん、ここは・・・」

店内を見ていると野菜を手に取り震えるマッサの姿があった。

「マッサさん?どうしました?」

「何故此処にこれ程みずみずしい野菜が並んでいるのですか!」

港町であるポメは商都として発展した為、食料の多くは近隣の町や村から集めてきていた、その為にどうしても鮮度が落ちるのが当たり前なのだが、俺が喚び出した道の駅では産地直送の野菜が並んでいる、マッサにとってあり得ない状況であった。


「あー、これは俺のチカラで喚び出した物です、毎日補充されるようですが1日に販売される数は今並んでいる分だけですね。」

「この量が毎日補充されるのですか!」

マッサはそれなりに広い店内に並べられた野菜を見て驚きを隠せない。

「ええ、これなら食糧難を改善できるでしょうか?」

「充分過ぎます、むしろ町が平和になった際に他所の農業が廃れないか不安なぐらいです・・・」

「それなら平和になったら店を閉めましょう、戦時だからこそ値段を落として販売するのです、平和になり値段が上がれば不満に思う人も出るでしょう。」

「たしかに・・・」

「俺としても他所で生活している人の暮らしを脅かすような真似はしたくありません。」

「ゴウさんは素晴らしい人だ、今この野菜を高値で売ればいくらでも稼げるでしょうに。」

「足下を見るような商売はしたくありません。

そもそも生活するのにお金を必要としていませんから。」

俺は衣食住全てをチカラで賄えている、鉄道からの収入も止まる事無く入っている為、お金を稼ぐという事を重要視していなかった。


「本来ならこの国の商人として私がすべき事なのでしょうが・・・

お恥ずかしい限りです。」

「マッサさん、私はただ特殊なチカラを使っているだけです。

貴方は命をかけて危険な海を越えて食料を入手しようとしていたでは無いですか。

何も恥じる事なんかありません。」

「ゴウさんには感謝しかありません。」


「・・・そうだ、マッサさん、この町で食料品を販売している店に顔は聞きますか?」

「ええ、私と同業者になりますからそれなりには。」

「マッサさんが信用出来る人に声をかけてもらえますか?」

「いいですが何をするつもりですか?」

「私がこのままこの店で商売をするとマッサさん達食料品を販売している人達が困るでしょう。

それならわたしの店で1個1銅貨で買ってもらい、それぞれの店で1個2銅貨で売ってもらうのはどうでしょう?

僅かながらでも収益になるのでは無いでしょうか?」

「たしかに私達は助かりますがゴウさんがそこまでする理由が無いのでは無いですか?」

「私は儲かる必要はありませんがこの町の商人の方々は違うでしょう。」

「我々の事まで配慮してもらえるとは、ゴウさんには感謝しかありません。」

マッサは深々とお礼をいうのであった。

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