第137話 ハーツ王太子

「なに?プレザが私に面会を求めている?

珍しいな、冒険者になってから随分と音沙汰が無かったのだが・・・」

ハーツはひさしぶりに聞く幼馴染の名前に少し驚く。

「追い返しましょうか?」

「いや、会おう。

プレザは幼馴染だ、何か話したい事があるのだろう。

私の私室に通してくれ。」

ハーツは友人としてプレザに会うために私室に通すように命じた。


「プレザ、久しぶりだな、元気そうで良かったぞ。」

「ハーツ王太子殿下、お目通りを許して頂き感謝致します。」

プレザは膝をつき臣下の礼を取る。


「ここは方苦しい事は抜きで構わない、友人として話してくれ。」

「ありがたい言葉にございます。」

「まだ堅いな、友人として話せ。」

「・・・ハーツ、お前も王太子になったんだから礼節をだな!」

「いいって、お前は幼馴染じゃないか、それに城に仕えている訳でも無いだろ?

堅い事は抜きで話そう。」

「まったく・・・

いや、まあその方がありがたい話なんだが。」

「それで何かあったのか?

冒険者として一流になるまで会わないと言っていたお前が私を訪ねてくるとは・・・」

「国の危機だからな、俺としても出来ることはしたいと思っている。」

「そうか!お前が来てくれたなら心強い、私の側近として・・・」

「お待ちください、光栄な事なのですが、今はそれより大事な事があります。」

「なに?」

「ハーツ様は郊外に出来ている港をご存知ですか?」

「うむ、知っている。

魔王軍が物資の輸送に建築したのではないかとの見解が出ている施設だな。」

「いえ、あれは魔王の施設ではありません、現に魔王軍はあの施設に入る事も出来ておりませぬ。」

「なんだと?魔王軍では無いなら一体誰がいつ作ったと言うのだ、あれが出来た時には既に魔王軍がポメを囲んでいたのだぞ。」

「ゴウという魔法使いが作った物にございます。」

「聞いたことのない者だな。」

「ジョージア王国の者にて、その名がまだ聞こえてこないのでしょう。」

「ジョージア王国か、クロエが避難したはずだが、無事に着いたのだろうか・・・」

ハーツは王城が攻め込まれる前にジョージア王国へ逃がしたクロエを思っていた。


「ハーツ様、それも含めてゴウにたずねてみるのは如何でしょう?

彼はジョージア王国とラニアン王国を安全に航行することが出来る船を持っております。」

「なに、海を安全に渡るだと、海には多数の魔物がいるのではないのか!」

「はい、私もキングクラーケンに襲われ危うく命を落とすところをゴウに救われました。」

「キングクラーケンを撃退したのか!あれはAランク冒険者が複数人で倒す物と聞いているぞ。」

「はい、身を持って知りました。

ただゴウは魔物が近づけないチカラを持っています。

現に新たに出来た港に魔王軍が敷地に入る事もできず、見えない壁に張り付いておりました。」

「・・・それは代え難い人物のようだ、うまくいけばラニアン王国が存続できるかもしれん。」

「私もそう考えます、ですのでハーツ様に一度お会いしてもらいたいのです。」

「わかった、プレザ呼んできてくれるか?」

「それが、ゴウは登城にいい思いがない様子です。

ハーツ様には御足労をかけますが直接お会いに行ってもらえませんか?」

プレザは心苦しい思いをしながらもハーツに頼むのだった。

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