第131話 案内

「ゴウさんが喚び出したのですか!」

「ええ、喚び出しましたよ。」

「信じられない・・・」

魔術師のハボからするとこれほどの魔力のこもった物を召喚出来ることが信じられなかった。


「まあ、信じてもらえなくてもかまいません。

それより、お疲れでしょう、話はこれぐらいにして部屋に案内しますよ。

そこでゆっくり休んでください。」

「すいません、ハボさん失礼な事を言わないでください。」

マッサはゴウの機嫌を損ねたのでは無いかとすぐに謝罪する。


「いえいえ、信じられないのは仕方ないと思ってますよ、それより皆さんは魔物と戦い大変だったでしょう。

話す事は明日でもできます、今はゆっくり身体を休めてください。」

「ありがとうございます。」

マッサは深く頭を下げる。


そして俺は全員を部屋に案内する。

「そうだ、夕食は18時から21時の間でレストランで食べれますから、食事をされる方はお越しください。」

「レストラン?」

「詳しい場所は部屋の中にある案内に書いてます、他にも色々施設がありますので自由に使ってくれてかまいませんよ。」

「何から何までありがとうございます。」

「困った時はお互い様ですよ、今は皆さんゆっくりお休みください。」

俺は部屋に案内したあと、自室に戻っていく。


「いい人に会えて良かったな。」

「そうですね。ハボ、お前は失礼な事を言うんじゃない。」

「わかってます、つい出てしまったんです。

皆さんにはわからないかも知れないですけど、この船に内包する魔力は凄まじい物なんです!」

「お陰で助かっているんだ、深く詮索するのは失礼だ、あとでちゃんと謝罪しておけよ。」

「はい・・・」

ハボも自身の言葉が失礼だとはわかっていた。


「お父さん、部屋にはいろうよ、僕疲れたよ・・・」

息子のノースがマッサの手を引く。

「おお、そうだな、中に入るとしようか。

プレザさんはどの部屋を?」

「隣の部屋を使います、何かあれば声をかけてください。」

「お願いします、さあ中に入ろうか。」 

マッサは家族を連れて部屋に入るとそこは洋室と和室の二部屋がくっついた広い部屋であった。


「船にこれだけの部屋を用意してくれたとは・・・」

「おとうさん、変わったトイレとお風呂があるよ。」

娘のリラは部屋の中にあった別の部屋を見ると驚きの声が上がる。


「お風呂だと?海の上で水は貴重なはず、それに室内にトイレなど不衛生じゃないか!」

「ううん、違うよ、凄くきれいなの!」

「何がどう違う・・・

なんだここは!」

たしかにリラが言うように形からトイレだと考えられるがそこは奇麗に清掃されており不衛生の欠片も見当たらない。

「なんだこのレバーは?」

マッサがレバーを引くと水が流れる。

「うわぁ!水が貴重な水を流れた!!」

「・・・お父さん、これってその用をしたあと、流すって事なのかな?」

「まさか、その為に貴重な水を使うのかい?」

「でも、この大きさだと貯める事も出来ないし、さっきの水も何処かに流れていったみたいだし・・・」

「しかしなぁ、水を使ってしまうのは、あり得ないだろう。」

海の上では水は貴重な物である、トイレの為に使うなど理解が出来ない。


「わからなかったら聞いてみたら良いんだよ。」

リラは名案かのように思いつく。

「聞くって誰に?」

「ゴウさん、ノース行こう!」

「うん、お姉ちゃん。」

ノースも珍しい所にきた興奮から船内を見たかったのだ、リラの誘いにのって一緒に部屋から飛び出して行く。


「こら!待ちなさい!」

マッサは一瞬何を言い出したのか理解が追いついていなかったが二人が飛び出して行った所で我に返り二人を追いかけるのだった。

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