第130話 海の魔物

「でかい!なんだあれは!!」

窓の向こう、少し離れた所に見えたのは30メートルはあろうかという巨大なイカのような生物だった。


「ゴウさん、あれが魔物でしょうか?」

「たぶん・・・たしかにあんな物がいれば海を渡るのも命懸けって言うのがわかるな。」

「お兄ちゃん、この船は大丈夫かな?」

「神様が安全に旅をする為にくれたものだからね、どんな攻撃も受け付けないし、魔物が近付く事も無いよ。」

「それは良かった・・・」

カスミも近付いてこない魔物の様子もあり一安心しているようだ。


「ゴウさん!船が見えます!」

「どこ!」

「あそこです、イカの近くに!」

イカより小さい船がイカから逃げようとしているのだが、既に捕捉されているようで何度か足に襲われては火の玉や何かの攻撃で弾くように見受けられる。


「救援に行くよ、船を近付けるから!」

俺は慌てるように風呂から上がる。

そして、事態が事態なだけに全員急いで服を着て救援に向かうのだった・・・


船が近づくと魔物は攻撃を止め、離れていく・・・

「大丈夫ですか?」

俺は甲板から襲われていた船に向かい声をかける。

「貴殿達は何者だ!!」

「ジョージア王国からポメに向かっている者です。」

「ジョージア王国か、私はラニアン王国冒険者赤い牙のプレザだ。

ここにいるのは仲間と雇い主の商人マッサ殿とそのご家族だ。」

「そうですか、どうでしょう見る限り船はだいぶ傷んでいそうなので、こちらに乗船なさいますか?」

「忝い、先程のキングクラーケンの攻撃でかなりボロボロになってしまったのだ、マッサ殿、船を廃棄するが構いませんか?」

「ええ、命が合っての物です、どなたか知りませんが御厚意に感謝します。」

「それでは梯子を降ろします。」

俺は梯子を降ろして乗っていた人達を船内に受け入れる。


「あらためまして、この船の所有者のゴウです。」

「私はポメで商人をしているマッサ、こちらは妻のリモン、息子のノース、娘のリラです。

みんな挨拶をしなさい。」

華族それぞれ挨拶をしてくる。

「私は先程も名乗った通り、冒険者赤い牙のリーダー、プレザ、こっちは・・・」

「魔術師のハボです。」

「よろしくお願いします。」

俺は赤い牙の二人と握手をかわす。


「それでマッサさんはどちらに向かおうとしていたのですか?」

「ジョージア王国に食料の買い出しに向かっていたんだ、ただ船があのようになった以上、買い出しは失敗したということだが・・・」

「食料を買い出しってそれほどポメは食料が無いのですか?」

「ああ、籠城も半年になる、兵士はまだしも住民に配給される食料はだいぶ無くなってきていてな、僅かな可能性にかけて海を渡ろうとしたのだが・・・」

「そうでしたか、食料については私の方で何とか出来ると思いますのでこのままポメに向かうのでよろしいでしょうか?」 

「何とか出来るのか!」

「はい、ただ全て無料とはいかず購入することは可能になります。」

「購入でも問題ない!多くの住民に金の使い道など無くなっているのだ。」

「パン一つ銅貨1枚で販売しますよ。」

「安い!それなら誰も問題にしないだろう!」

「それなら急いで行きましょうか?

マッサさんは地元の方に顔が効きますか?」

「ええ、それなりには効く方ですね。」

「それならポメの町に港の土地を貰うことはできますか?」

「港?海沿いの土地はそれなりに空いている場所があったはずだ、それこそ購入になると思うが買うことは出来る。」

「そうですか、実は私の船は町近くに作った港に到着するのですが、町が籠城しているなら搬入をどうするか考えておりまして。」

「それなら私が町に運搬しましょう、船を使い町の港に運び込みます。」

「それは助かります、ですが海には魔物画いるのでは?」

「陸地沿いなら魔物は出ないのです、ゴウさんは知らないのですか?」

「ええ、浅学なものでしてまったく存じませんでした。」

「・・・失礼ですがこの船の魔物対策は?」

「この船に魔物が近づく事はありません、そういうチカラが作用していると理解してほしいです。」

「たしかにキングクラーケンもこの船が近づくと逃げて行きましたな。」

「はい、ですので安全に航海できますから赤い牙のお二人も警戒しないで良いですよ。」

「そう言われてもな。」

プレザはハボを見る。


「プレザ、たぶん大丈夫だ、この船からかなり強力な魔力を感じる、そういった力が発生していてもおかしくない。」

「ハボさんは感じることができるのですか?」

俺はハボの言葉が気になり質問する。


「ああ、これでもそれなりの魔術師を自負している、魔力を感じる事は出来る。

ゴウさん、この船は何処で手に入れたのですか?これほどの魔道具を作る魔術技師の噂すら聞いたことが無い。

ジョージア王国ではそれほど魔術技師の技術が上がっているのですか?」

「魔術技師は知りませんがこの船は私が喚び出した物です。」

俺の言葉にハボだけではなくマッサ達も固まっていた。

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