第124話 移動中

「ねえ、お兄ちゃん、この電車私達以外の姿を見ないんだけど?」

「俺達しか乗ってないからね、港まで直通だよ。」

「えっ、でもこれって豪華列車ってやつじゃない?

私テレビで見たことあるよ、」

「喚び出せるみたいだから好きに使わせてもらっているんだよ。

それに運行資金もかからないからわざわざ他の場所に停車する必要も無いから俺達しか乗ってないんだよ。」

「ねぇ、見てきていいかな?」

「いいよ、食堂車で好きな物を頼んでも良いから。」

「はーい。」

カスミは電車内を見学しにいった。


「お兄ちゃんのチカラ凄いよね。」

電車内を見ながらカスミは呟く。

王都にある駅にホテル、各所に繋がる路線、今から向かう港、どう考えても過剰なチカラである。


「ミユキさんもチカラを貰ったって聞きましたけど、ここまでのチカラは無いのですよね?」

カスミは途中見かけたミユキとお茶をしながら話をする。

「ええ、ゴウさんは別の神様からチカラを貰ったので私達とは違うんですけど、ゴウさんにチカラを授けてくれた神様は最大限のチカラをくれたみたいです。」

「ミユキさんは違うの?」

「私達は違います、ジョブといった形でチカラを貰ったのですが、私はまだ使った事も無くて。」


「どんなジョブ貰ったのですか?」

「私は吟遊詩人です、でも歌っても特に何も無くて、役に立っていませんね。」

「ごめんなさい、何か聞いてはいけない事だったでしょうか。」

「いいの、ゴウさんと一緒にいるなら知ることになると思うし。」

「でも・・・」

「私もゴウさんに養われている身だから気にしないでね。

それにチカラが無いのはカスミさんも同じでしょ?」

「うん、私達は特に誰にも会う事無くこっちに来たから、誰も使えないって聞いてます。」


「チカラが無い中で生きていくのは難しいと思うの、私の友達はチカラを貰ってなんとか生きているけど大変みたいだよ。」

「友達ですか?でもホテルにいませんよね?」

「ええ、ゴウさんと初めて会った時に、私が奴隷になっている事を変に誤解して、ゴウさんに襲いかかってしまってゴウさんがいる施設には立入禁止になってるの。」

「お兄ちゃんに襲いかかったんですか!」

「はい、本人も反省しているみたいですけど、ゴウさんに会わせる訳にもいかないし・・・」

ミユキとしては苦しい立場である、誤解とはいえリエが怒ったのは自分の境遇の為であり、とはいえ、ゴウを襲った事自体は許されるものでも無い事は理解していた。


「当然です、お兄ちゃんは優しいからすぐに許してしまいそうですけど、何が合っても守らないといけないのはお兄ちゃんの身ですからね、」

「わかってるわ、だから私からゴウさんに会ってほしいとは言ってないわ。

ただ生活用品とかは多少なり買わせてほしいとお願いしただけ。」

「まあ、この世界には色々無い物がありますから・・・」

ゴウを襲った事は許せないが現代の生活をしていた者にこの世界の生活は苦しい、特に女性に必要な物が圧倒的に足りないのだ、カスミは苦しいミユキの胸の内を察するのだった。

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