第119話 働くこと

「おいマナブ、何一人で納得してんだよ!」

ゴウと別れみんなの所に集まるとリュウタがマナブの胸倉を掴む。

「離せよ、リュウタ。

これはみんなの為になる話だ。」

「だから説明しろ!」

「いいか、俺達は今、金も無ければ何も出来ない身の上だ、そんな俺達はゴウさんの好意で此処に置かせてもらっているがいつまでもゴウさんに縋り付く訳にはいかないだろ?」

「あんな男に縋り付く気は無いが・・・」

「だからこそ、自立する為に支援してくれると言っているんだ、金を稼げば自分でやりたい事も出来るようになるし、働く事でゴウさんの役に立てば縋り付いているだけでも無いだろ。」

「それじゃお前はみんなに働けっていうつもりか!こんな訳のわからない世界に来てみんなが混乱しているんだぞ!」


「いつまでもこのままじゃ駄目だろ。

それになリュウタ、日本に帰れるかどうかもわからない、いや帰れない可能性が高いと考えるべきだと思う。

そうなった時にゴウさんの好意にいつまでも縋り付く訳にはいかないと言っているんだ。」

「だけどな、まだ心の整理が出来てない奴もいるんだぞ。」

「ゴウさんも今すぐに全員やれとは言ってなかっただろ、出来る奴からやったらいいんだ。

とにかく説明するから納得してくれた人から働いてもらう。」

「勝手にしろ!」

マナブは文句を言うリュウタをおいて全員をロビーに集めて説明する。


「マナブくん、働かないといけないんですか?」

「働いた方が今後の為になると思う。

ゴウさんの世話になってはいるがいつまでもお金が無いというのは将来を考えれば厳しいだろう。」

「たしかにせっかく異世界に来たんだしね。

買い物ぐらい・・・」

「なあ、戦闘系の訓練とかしてもらえないのか?

やっぱ、異世界といったら冒険者だよな!」

「それこそ、対価が必要になるんじゃないか?」

「やっぱりいるよな・・・」


「ねえ、カスミはどうなっているの?姿が見えないけど?」

「カスミさんは先日マコトに襲われて、少々心を病んでしまっているみたいで、今は親戚のゴウさんの所で見てもらっている。」

「異世界に親戚がいるのは強いよね。」

「私もお金持ちの親戚がほしーい。」


これまでマコトという共通の敵がいた為纏まっていたものが、マコトがいなくなった為それぞれのグループに分かれてそれぞれ意見を言っていて纏まりを見せない。


「なお、これは強制ではない、働かなくても今すぐ追い出される事は無いと思う。

ただ、時給もいいし、稼ぎたいのなら悪くない話だと思っている。」


「えー、どうする?」

「仕事によるよね?」


「仕事は新規店舗のスタッフらしい、商品の販売、陳列といった所らしいのだが、詳しくは働く人に説明がある。」

「ようはアルバイトみたいな物でしょ?」

「まあ、そんなところだと思う。」

「面白そう、私高校生になったらバイトしようと思ってたんだ♪」

「私もやってみようかな?」


アルバイトと聞いて興味が出るものも現れそれぞれがワイワイと騒ぎながら、仲間内でどうするか話し合っていた。


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