第108話 説明

「さてカスミちゃん、話してもらえるかな?」

「はい、みんなもゴウ兄さんは絶対に味方になってくれるから、私が説明する間、落ち着いて聞いててくれる?」


「わかったよ、カスミがそこまで言うなら信頼出来る奴何だろ。」

リュウタは少し争った事もあり不服そうではあるがカスミの言葉を否定する気は無いようだった。

「この男が何を考えているか、それをはっきりとさせたい。」

マナブの視線は厳しい物がある。


「二人共納得出来ないなら私とゴウ兄さんの二人で話します。」

「「こんな男と二人になんてさせられるか!」」

リュウタとマナブの声が被る。


「まあ、会ったばかりだから信頼しろとは言わないけど、話し合いぐらいは冷静に頼みたいな。

カスミちゃん、説明をお願いするよ。」

「はい。

私達は学校で授業を受けていたら、いきなりこの世界に連れてこられたんです。」

「途中で誰かと会わなかった?」

「途中で?この世界にくる前ですか?会っていませんけど?」

「俺達とは違う形で来たみたいだね。」

「ゴウ兄さんは誰かに会ったんですか?」

「神様を名乗る人に会った、その人の話だと俺を含めて何人かの人はその神様の手違いでこの世界に来たって言っていた。」

「私達は、少なくとも私は会っていません。

リュウタくん、マナブくんは会った?」

「会ってないですね。」

「会ってねぇな。」

二人共首を振る。


「なるほど。」

「会ってねぇとなんかあんのかよ!」

「ちょっとリュウタくん!」

「俺達は神様を名乗る人に会ったからチカラを貰ったんだ、君達の誰かに何かチカラを貰った人はいるかい?」

「チカラ?なんの話だ?」

「こんな所に東京駅がある事を不思議に思わなかったかい?」

「そりゃ不思議だとは思ったさ。」

「これを作れるのが俺のチカラだ。」

「はぁ?お前頭おかしいんじゃねえか?」

リュウタは信じられないようだった。


「まあ、無理に信じなくてもいいよ、俺だけ不相応なチカラを貰っている身だからね。

他の人はジョブっていうのを貰い、それに伴ったチカラがあるようだね。」

「ジョブですか?何にかゲームみたいな。」

「多分その認識でいいと思う、俺がチカラを貰った神様と他の人が貰った神様は違うんだ、他の人は話を聞く限り適当に渡された感じだったな。」


「仮に貴方の話を信じるとして、貴方は今まで何処にいたんですか?

この駅を作ったのなら此処にいるのが普通では?」

「駅以外も作れるんだ、まあ色々合って王都にいるのが面倒くさくなったから地方に行ってのんびりしてた。」

「こんな世界でのんびりだと・・・」

マナブは信じれない物を見ている気分だ、城にいる間に魔物などについても学ぶ機会があった、少しでも森に入ればそこは弱肉強食の世界、平和な日本とはかけ離れていると認識していた。


「そうだな、俺のチカラがあればのんびり暮らす事は可能なんだ。」

「ゴウ兄さんらしいです。」

「ここだと会社勤めもしなくていいしね、綺麗な景色を見ながら釣りをして過ごすのは最高だよ。」

「・・・ゴウ兄さん、お願いがあるんです。」

「何かな?」

「私達を庇護してくれませんか?」

「勿論、カスミちゃんを庇護する事は当然だと思うし、カスミちゃんの友人を庇護するのも当たり前の事だね。」

カスミは一先ず胸を撫で下ろすのであった。

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