第98話 召喚魔法

「ヒーホンから現れる者は本当にいるのだな。」

ゴウのチカラを見てリスクはヒーホンの存在を改めて認識していた。


「ならばこそ、この王家に伝わる召喚魔法も本物なのだろうか?」

かつて古の魔法使いを呼び出そうと多くの魔法使いに召喚魔法が研究された事があった、だか古の魔法使いの意思を無視した召喚魔法は古の魔法使いの機嫌を損ねると当時の王家が禁術とし、研究された魔法は封印され王家が管理してきたのだが

長年の保管の為に口伝が消失し、王家を救う為の最後の手段として古の魔法使いを喚び出す方法として存在すると口伝が変質していた。


「ゴウという奴が私にも敵対すると言うなら、新たな古の魔法使いを喚べばいいだけの話だ。」

リスクは禁術を持ち出し、自身の配下の者達を集めて召喚魔法の実現に向けて動く。


その結果・・・

「リスク様!成功致しました!!」

「よくやったぞ!」


リスクの眼の前の魔法陣の上には多くの中学生が床に転んだ状態だった。

「なんだ、ここは?」

「私達どうなったの!」

「教室にいたんじゃなかった?」


リスクはクラス丸ごとの集団召喚に成功していた。

「くく、これだけいればゴウなどにデカい顔はさせぬわ!

グランめ見ていろ、王位は私の物なのだ。」

リスクは自らの成功を疑っていなかった・・・


だが・・・

「なに?誰も何もチカラが無いだと?」

「はっ、誰一人身を守る方法すら知らず、何も生み出すチカラがございません。」

リスクは自らが謹慎させられている離宮に部屋を与えて中学生達を優遇して様々な訓練、調査を行っていたが誰一人魔法一つ放つ事が出来なかった。


「ヒーホンの民は強大な魔法使いなのではないのか?

これじゃ役立たずじゃないか!」

「リスク様、いかがなさいましょう?」

「役立たずはいらん、始末しろ。」

「お待ち下さい、今離宮から大量の死体が出れば陛下になんと申開きすればいいかわかりませぬ。」

「ぬっ・・・」

「幸い、かの者達は呼び出されたと知りませぬ、たまたまヒーホンから流れ着いた者達をリスク様が寛大な心で迎えていたと言えばよろしいのでは?」

「たしかに流れ着いた者を庇護していたのは間違い無いからな。」

「はっ!リスク様が私財を使い奴等を養っていた事に間違い無いのですから、問題にはならないでしょう。」

「よし、父上に報告してくる。」

リスクは中学生を押し付けるつもりで父クルトに報告する。


「なに、三十人ものヒーホンからの来訪者がいると?」

「はい、我が離宮に現れたのですが彼等はヒーホンから来たと言っていたことから報告に参りました。」

「ふむ、ヒーホンからの者ならそれなりの待遇で迎えねばなるまい。

その者たちを連れてくるように。」

「かしこまりました。」

クルトはリスクが喚び出したなど思いもせずにヒーホンからの来訪者として受け入れるのであった。

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