第95話 ゴウがいない駅では
「ゴウさんがミユキさん達を連れて王都から出て行った?」
マコトがコウタから教えてもらったのは翌日になってからだった。
「そうだよ、旅行を兼ねて地方に鉄道網を敷設するんだって。」
「なんでミユキさん達を連れて行く必要があるんだよ。」
「そりゃ二人はゴウさんの奴隷だからね、離れて暮らすには支障があるからだろ。」
「ちっ!クソ!ミユキさんを好き放題嬲っているなんて・・・」
マコトは苛立ちから壁を蹴る。
「おいおい、何してるんだよ、そもそもミユキさんに相手にもされてないだろ、それにあの二人がゴウさんに惹かれるのも仕方ない話だろ。」
「なんでだよ!」
「そりゃ、これだけのチカラがあるんだ、この先金に困る事は無いだろうし、奴隷という地獄から救ってもらったんだぞ、それだけでも感謝してあまりあるだろ。」
「奴隷から救って無いじゃないか!」
「いやいや、実際の二人の扱いは奴隷じゃないからな、普通に生活してるし、何ならこの世界の貴族よりいい生活をしてるから。」
駅のホテルは現代日本と同じである、コウタとマコトにはそれなりの制限があるがミユキとアヤカは駅の施設を自由に使えるのである、これだけでも貴族には味わえない程の贅沢だろう。
「くそ、面白くない!」
だがマコトからすると面白い話では無かった、聞くだけで腹が立ってくる。
「そんな事よりゴウさんから仕事を頼まれているんだ、お前も手伝えよ。」
「はぁ?こんなに状況で働けってか?
俺はアイツの奴隷じゃないぞ。」
「何を言ってるんだよ、世話になっているんだから頼まれ事ぐらいするのが普通だろ?」
「・・・で、何をしろって?」
「石鹸の販売を行なうそうだ、値段は銅貨一枚、売るのはマルコさんが行ってくれるから、俺達はドラッグストアから石鹸を入口に運ぶのが仕事だな。」
「肉体労働かよ!」
「たいした仕事じゃないだろ、まったくこれぐらいでホテルに泊まれるんだから文句を言わずにやれよ。」
コウタはマコトの言葉に呆れている、ただゴウが頼んだのはコウタであり、マコトではない事をコウタはあまり気にもしていなかった。
「はいはい、やるよ、やればいいんだろ?」
マコトはぶつくさ言いながら石鹸を運び出す・・・
「なぁコウタ。」
「今度は何だよ。」
「なんでドラッグストアに人夫を入れて運ばせないんだ?そっちの方が楽じゃん。」
「ドラッグストアで売ってる物には世界に流通させるべきじゃない物があるって言ってたよ。
えーと、代金は此処に入れたらいいんだねっと・・・」
ゴウを始めミユキとアヤカは代金を支払う事無く全ての物を使用できるがコウタ達は商品を運び出す際にお金を支払う必要がある。
「コウタ、何をしてるんだ?」
「代金を払わないと駄目なんだよ、俺達はマルコさんから受け取った代金を此処に置いたら商品を運び出す流れになっているんだ。」
「なんでそんな面倒くさい事になってるんだ。」
「一応店から運び出すからじゃないかな。」
「何だよまったくアイツは本当に使えない奴だ。」
「そんな事を言うなよ、お陰で俺達はいい生活出来るんだからな。」
「いい生活ね・・・
なぁコウタ、ここの商品を売れば金になると思わないか?」
「えっ?」
「異世界で日本の商品が売れるって定番だろ。」
「駄目だって、せめてゴウさんに相談したほうがいい。」
「アイツがいないのが悪いんだって、さてどれが売れるかな。」
マコトは店内を物色していくのだった・・・
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