第89話 アリサの訪問

「ねえ、ミユキさん。」

「なんでしょう?」

「最近毎日アリサさんが来ているけど、何故か知ってる?」


石鹸の件以来、ほぼ毎日のようにアリサはゴウの滞在するホテルに通っていた。

「それは女の子ですから。」

ミユキは苦笑いする。

「これだけ来ていると噂になりかねないと思うんだけど、ミユキさんの方からそれとなく伝えてもらえないかな?」

「私は立場が低いですから。 それにアリサさんに控えてなんて言えませんよ。」

「たしかに幸せそうな顔をしているもんなぁ、俺もやめろなんて言えないね。」

アリサは楽しそうにやってきては幸せそうな顔をして帰っていく、それを見て控えろなんてよく言えなかった。


だが、その姿は多くの人が見ている、古の魔法使いに会いにアリサ王女が足繁く通う、その笑顔を見る限り本人の望みで行っている事は明らかである。

世間では古の魔法使いを取り込む為に王家が働きかけ、それをアリサ王女も受け入れていると噂されていた。


「アリサ、噂について知っているのか?」

グランはアリサに直接たずねていた。

「噂?ああ、ゴウ様の下に通っていることですか?」

「そうだ、流石に王女としてはしたない振舞いは控えておくべきだ。」

「大丈夫です、古の魔法使いを取り込む事は王家の悲願でもあります、だからこそ父上も反対していないのです。」

「たしかに父上は何も言っていないな。」

「そうなのです、ですのでグラン兄上もよく覚えておいてください。」

「私はリスク兄上のようなヘマはしない、それにゴウは我が派閥のアレス伯爵家と仲が良い、私から何かしようとは思わない。」

「それならよろしいのです。

私としてはゴウ様との関係さえ認めていただければグラン兄上を支持してもよろしいと思いますよ。」

「思わぬ副産物だな、私から批判する事は無い、それは今後もだ。」

「ありがとうございます。」

「古の魔法使いを我等王家に取り入れるのは初代様からの悲願である事は私も理解している、アリサなら問題無いだろうがくれぐれも失敗しないようにな。」

「心得ております、ゴウ様の人となりもだいたいわかってきましたのでこれから話を進めていこうと思いますわ。」

「女性とは怖いものだ。」

グランは肩をすくめるのであった。

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