第88話 石鹸配布

タムルは知り合いの商人に声をかけていた。

「ヨクー、この石鹸いくらで買う?」

「また寄付の横流しか、悪い奴め、どれどれ・・・ふむ、かなり品質がいい、香りも素晴らしい、これなら一つ銀貨ニ枚で売れるな。」

「ほう、中々の値段をつけるな、石鹸は銅貨五枚といった所じゃないか?」

「品質が良いからな、上手く売れればもっと値が上がるかもしれないが・・・

対価はいつも通り四分六で良いか?」

「欲を出してもいけませんからね、六で我慢しましょう。」

「まあ、代わりに販売元は黙っておくからな。」

「当然です、それと最近若いシスターが入ったのです、中々の上物ですので買取り先があれば・・・」

「そちらも調べておく、いつも助かるよ。

シスターに欲情する奴は結構いるからな。」

「皆も業の深い事です。」

「お前が言うな。」

「くく、そうですなぁ〜」

タムルとヨクーは大きく笑い合い、今後の収益を想像していた・・・


その頃、俺はマルコにも石鹸を渡していた。

「石鹸か?これを安く広めたらいいんだな?」

「そうそう、マルコの知り合いからで良いから、知り合いがいい香りしてたら気になる奴も出てくるだろ?」

「たしかにこの石鹸はいい香りをしているな。」

「そうだろ?

それに石鹸を使うと病気になりにくいという話もあるんだ、是非多くの人が使ってくれるようにしたい。」

「それで銅貨一枚か。」

「もっといい香りの石鹸からはもう少し値段を上げるけど、最安値のこの石鹸からは金を取る気は無いんだ。」

「わかった、グラン殿下にも話をしても構わないか?」

「いいよ、お前達の派閥強化にしても構わない、俺としては石鹸が流行るだけで良いからな。」

教会に寄付した物と同じ石鹸を大量にばらまく手配をしていた、そして、この事はアリサ王女の耳にも入り早々に来訪してくる。


「ゴウ様、先日マルコ伯爵子息に石鹸を配ったとお聞きしましたが?」

「ええ、石鹸を使えば病を抑えられると聞き及んでおりまして、この機会に様々な所で使われるようになればと思い配りました。」

「良いお考えです、この事は父クルトも聞き及び感動しておりました。

近々何らかの恩賞が下るとは思いますが・・・

私がお聞きしたいことは別の事なのです。」

「何でしょう?」

「マルコ伯爵子息にはもっといい香りの石鹸が有るとお聞きしましたが、私にも頂け無いでしょうか?」

「よろしいですよ、ただ私はそのどれが良いのか詳しくありませんのでミユキに御用意させてもよろしいでしょうか?」

「ええ、ワガママを言っているのは私の方です。

ミユキよろしくお願いします。」


「わかりました、品物は御用意致します。

ですがそれだけでよろしいのでしょうか?」

「えっ?」

「ゴウさんがお住まいになっているこちらには女の天国があるのです。」

ミユキはサラリと自分の髪をすく、其処にはこの世界では考えられない程、手入れされた艶々した髪が存在している。

そればかりかミユキの肌からはそれ以上の輝きを感じる・・・


「ミ、ミユキ、もしかしてその肌や髪の秘密を教えてくれるのですか?」

「ええ、ゴウさんの許可が得ることが出来ればこの場所にある施設で行なう事が可能です。」

「ゴウさん!」

「ミユキさん煽らない、アリサさん、使うのは良いのですが、私の屋敷になっている場所で肌を晒すような行為はよろしく無いのでは?」

「大丈夫です、その事については問題ありません。

ミユキ、許可は出たわ。」

「わかりました、それなら参りましょう。

いざ桃源郷へ、お付きの方々もどうぞこちらに、同じ女性として美しくなりましょう。」

ミユキはアリサと侍女達を連れてフィットネス、スパエリアへと案内する。


その時それが戻れぬ道ということに気付いている者はミユキ以外にいなかったのだ・・・

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