第86話 タイラーとユメカ

「一緒に行かなくて良かったの?」

俺の所に残る決断をしたアヤカに質問する。

「いいの、お母さんは新しい家族と一緒に幸せになるつもりだし・・・」

「いつでも会いに行っていいからね。

その為に鉄道を敷設しているんだ、アヤカが望むなら専用列車でも走らせてあげるからね。」

「ありがとうございます、その時はよろしくお願いします。」

アヤカは気丈に笑顔で話そうとするがその表情は曇っている物があった。

母娘が離れる選択が正しいのかは俺にはわからない、だがいつでも会えるようにとタイラー領への路線を敷設する。


「さすがタイラー伯爵だ、鉄道が整備されたぞ。」

「噂だとタイラー伯爵夫人の尽力があったそうだ。」

タイラー領では鉄道の敷設を歓迎する声に溢れていた、その噂の中には伯爵夫人であるユメカの活躍が合ったという声も上がる。


「ユメカ、この民の声は君とアヤカ二人の功績だ。」

領地に戻ったタイラー達は領民の喜びの声を受けていた。

「私は・・・」

探していたアヤカを自分の下に連れて帰れなかった事を悲しみつつも、領民の感謝の声に複雑な思いを抱える。

「ユメカ、重く考える事はない、アヤカは少し離れた所に済んでいるだけだ。

君の娘という事に変わりはない、いつでも呼んでくれても構わないし、訪ねて行っても構わない。」

「そうですね、アヤカの無事も確認出来ましたし、ゴウさんも良い人みたいですから。」

ユメカは自分に納得させるように呟く。


「そうだ、ゴウ殿がユメカにと預かってきた物があるんだ。」

「なにでしょう?」

ユメカはタイラーが預かってきたという袋を開けると中には日本で見慣れた化粧品が入っていた。

「えっ!これって!!」

ユメカは目を疑う、たしかに鉄道という日本にある物が存在するのだ、化粧品が合ってもおかしくはないのかも知れない、だが実際に商品を見ると目を疑うしか無い。


「ユメカ、どうした?何か変な物か?」

「ううん!素晴らしい物よ!でもこんな物が手に入るなんて・・・」

「ゴウ殿は大したものでは無いと言っていたのだが・・・」 

「故郷では大したものでは無くても、此処だと有り得ない品物なの、タイラー様今一度ゴウさんの所を訪ねましょう。」

「帰ってきたばかりでか!」

「鉄道があればすぐです、それより早くこれを手に入れ無いと、絶対に争奪戦が始まってしまいます!」

「それ程の品物なのか?」

「間違い無いです!多分ゴウさんはこれの価値に気付いていません!早く押さえないと。」

タイラーとユメカはとんぼ返りで王都ジョアに向かうのであった。

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