第83話 話し合い

「ユメカ落ち着きなさい、ゴウ殿失礼した。」

タイラーはゴウの所有物である、ユメカが所有権を主張したような発言について謝罪する。

「タイラー様、なんでこんな人に謝るのですか!

アヤカを返してよ!」

取り乱すユメカを引き連れタイラーは一度帰っていく。


「アヤカちゃん大丈夫?」

「ううっ・・・ゴウさん!!」

アヤカは落ち着くまで俺の胸の中で号泣するのであった。


「アヤカちゃん落ち着いた?」

「・・・はい、お見苦しいところをお見せしました。」

落ち着いたアヤカは泣き腫れた目のまま恥ずかしそうにもじもじくんしていた。

「見苦しくなんて無いよ、泣きたい時は泣いたら良いんだよ、その為に男はいるんだから。」

「ふふ、それなら男の人はいつ泣くんです?」

「男は涙を流すべきでは無いって親戚の爺さんは言ってたっけ?」

「それは厳しいですね。」

「まあ、少なくとも女の子の悲しみを受け入れるぐらいは俺も出来るようになりたいからね。アヤカちゃんには協力してもらわないとね。」

「大丈夫ですからよ、充分受け入れてもらいましたから・・・」

「そう?まだ泣き足りないなら胸を貸すよ?」

「だ、大丈夫です、そのちょっと恥ずかしいですし・・・」

俺が両手を広げて迎え入れるような格好をするとアヤカは恥ずかしそうにモジモジしていた。


「ゴウさん、女の子を抱きしめようとするのはセクハラですよ〜

それにアヤカちゃんみたいな小さい女の子を抱きしめるのは事案です。」

「うっ!それはこまるなぁ〜」

ミユキのツッコミに俺達三人は少し空気が緩むのを感じた。

その日は美味しい物を食べてなるべく明るい雰囲気を維持することにそれぞれ務めていた。


「タイラー伯爵、ようこそお越しくださいました。」

「先日は妻が失礼した。」

俺とタイラーは二人で会っていた、アヤカにしてもユメカにしても互いの感情を整理する時間が必要なのは明らかなのだが二人に取り巻く問題は二人だけと言う訳にもいかない、俺達は直接懸念を話し合う。


「タイラー伯爵、最初に確認したいのですがアヤカを引き取るおつもりですか?」

「・・・正直に言うと難しいと思っている。

私も貴族としての対面もある、ユメカの娘とはいえ奴隷を養女に迎え入れる事は抵抗のあるものもいるだろう。」

「なるほど、しかしタイラー伯爵婦人はアヤカを引き取りたいでしょう?」

「わかってはいる、だがユメカを娶る時に無理を通した、これ以上は難しいというのが本音だ。」

「タイラー伯爵の気持ちはわかりました、私としては母娘が一緒にという気持ちもありますが父の違う娘を引き取る難しさも理解出来るつもりです。

ただ母娘の面会だけは互いの立場に関係無く、希望すれば出来るようにしたい、いえ、して欲しいとお願いします。」

「私としても異論は無い、母娘を引き離すつもりは無い、ただいつも王都にいる訳にはいかない為に何時でもという訳にはいかない。」

「それならタイラー伯爵がよろしければ領地まで鉄道を敷設しましょう、それなら時間が短縮出来るでしょう。」

「そこまでしていただけるのか。」

「大事なアヤカの為ですから。」

「なるほど、大事ですか?アヤカも大事にされているのですね。」

「それは勿論。」

「いやぁそれなら何も問題はありませんな、まさかそのような、いや、たしかに今はまだ幼くとも先を見れば・・・」

「うん?」

タイラーが何か変な事を言っているが問題無いなら大丈夫だろう。


「ユメカにも説得してみましょう。

なに、ゴウ殿が大事にしていると聞けば安心もするでしょう。」

タイラーは来た時に合った眉間のシワが無くなり、満足気に帰っていくのであった。

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